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「アリシア様~、オレダンスとかチョー苦手なんスけど~。」 「あらジーナったら、まだその様なことを。」 ジーナもオレと同じ気持ちだったみたいで。 立場も(わきま)えることなく、軽い調子で堂々と不満を口にするのだが…。 「残念ですけれど、異世界から召されたセツ殿と違い、守護騎士に拒否権はございませんわよ?今回は貴殿方の親族からも直々に、申し出を受けていることですし。」 今は守護騎士の命を受けてはいるけれど。 ルーファス達って何気に上流階級のお坊っちゃん、だったりするんだよね。 オレだけは一般市民だけど…。 「げ~…マジすか…」 「諦めるしかないよ、ジーナ。」 女王様に家の名まで出されては、抗うことは不可能だと悟ったジーナは。ロロに慰められながら、大袈裟な溜め息を吐く。 「貴方は守護騎士の中で、最も教養が足りないのですから。この際、社交界の礼節を学ぶ良き機会だと思いますよ?」 「う~…わーってるよ!」 ヴィンセントにとどめを刺され、ジーナも観念したように。女王様が用意した衣装を乱雑に漁り出した。 「何も堅く考える必要はありませんわ。なんといっても今回は、セツ様にご出席して頂くパーティーなのですから!」 オレが現世では一般人だったというのも考慮して。来賓も最小限に、気軽に楽しめるパーティーにするのだとアリシア様は、言って下さるけれど…。 それでも、オレにとってダンスパーティーなんてものは、非常にハードルが高いわけであって。 「オレ社交ダンスとか、したことないしなぁ…。」 「セツ殿がどうしても…とおっしゃるのでしたら、無理にとは申しませんわ。神子が召された事実を、私自らが皆に宣言するだけで良い話ですから。」 やっぱり貴族だかの集まる社交場に、オレなんかが参加するだなんて不安が拭えなくて。 ポツリと弱音を漏らせば、アリシア様は申し訳なさそうに苦笑を浮かべ。それでも無理強いはしないからって、配慮してくれる。 とはいっても女王様、明らかに残念そうにしてるんだけど…でも、なぁ… 「お披露目の機会でしたら、また幾らでも設けられますし。私共の都合を押し付けるつもりも勿論ございませんから。最終的にご出席するか否かは、セツ殿のご意志を尊重致しますので。どうかご検討下さいましね?」 結局、本日の謁見はダンスパーティーの件だけで時間が来てしまい。オレは悶々としながらも、みんなと一緒に屋敷へと戻った。 勿論、あのドレスももれなくして。 なんやかんや、屋敷へ着く頃には…きっちりオレの部屋へと運ばれていたのだけど。 とほほ…

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