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⑪
「お…ま、また勝手にっ…」
「すまない、返事は無かったが声が聞こえたので…な?」
許してくれと悪戯に笑うルーファスに。
惚れた弱味だ、無条件で許してしまうオレは、見事にハートのど真ん中をブチ抜かれ…撃沈する。
コイツのこういうとこ、絶対ワザとじゃねーかなって毎回思うんだけど…。
「そうむくれるな、セツ。」
別にっ怒ってるわけじゃないもんね!
…むしろ、だ。なんだかんだと俺のことを気にかけては、こうして毎晩のように会いに来てくれるのが。密かに楽しみだったり、するんだし。
しかもコイツは…
「お前をあんな目に…合わせてしまったからな。出来るだけ傍にいて、護りたいのだ…。」
いつ何が起こるか判らないから、心配なのだと。
バツが悪そうに自嘲するもんだから…。
「いいよ、別に。気にしてないからさ…。」
お前は特別だから、不法侵入くらい許してやるよって…照れ隠しにもオレが告げれば。ルーファスは、とても嬉しそうに顔を綻ばせてくれた。
もう…そんなだから、敵わないんだよなぁ…。
「ところでセツは…どうするんだ?」
行くのか?と、曖昧な疑問を投げながら、隣りへと腰掛けるルーファス。
その問いの意味を理解したオレは、うーん…と渋い声で答える。
「行きたくは、ないかな…」
勿論、話題は舞踏会とやらのことである。
正直、オレの身近な人間と言えば…ルーファスを始め、残りの守護騎士達に教育係のヴィンセントだろ?
あとは女王様にトリント大司教…それから、この屋敷で働いてるメイドさんや執事さん達くらいかな。
みんな身分とか、“神子”だからって気負うこともなく。元々一般人であるオレに合わせ、今では普通に接してくれるようになってたから…此処での暮らしも、随分と気楽になってきたんだけど。
宮殿の兵士や、たまに見かける如何にも偉そうな重臣や文官達。それに今日あった貴族のご令嬢だったりと…
建前上ではオレを神子と敬いながらも。
裏では化物でも見るかのように、異端視してんのが判ってしまうから…あまり良い気はしない。
まあ…世界を救う神子が世に現れる周期は。
少なくとも百年以上は、空いちゃうわけだから。大半の人間にとっては、伝説上のお伽噺みたいな存在であって。仕方ないとは思うけど。
元来オレは控えめな方で、目立つのは好きじゃないし。
どう見ても華の無い地味なオレが、だぞ?
自ら国主宰の公式パーティーで、しかもルーファス達を差し置いて主役扱いだなんて。無理があるとしか思えないんですけど…。
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