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⑫
「それにアレは…ちょっと、」
無いだろって、部屋にしっかり持ち込まれたドレスやピラピラの愛らしい衣装を横目に答えれば。ルーファスは同情するかのよう苦笑う。
けど…
「そうか…」
「オレなんかが女装すんだぞ?しかもふざけた仮装パーティーじゃなく、お偉いさん方がゾロゾロ集まるような公の場でとか…絶対あり得ないよな?」
身内や友達なんかとでやるハロウィーンのパーティーじゃあるまいし、と…オレは身振り手振りも加えて断固否定するのに。
「セツなら、似合うと思うがな。」
「え?」
こともなげに、ルーファスはさらりと肯定を口走る。
や…それは百歩譲って、お前個人の意見であってだな…。ナイナイと手を振りながらも、コイツに似合うだとか言われちゃうとさ。…その気になっちゃいそうだから、ヤバい。
「い、いくらルーが…似合うって言ってもオレはヤダかんなっ…」
どうしてだか、オレにドレスを着せたいらしいルーファスは。なんとも物欲しそうな目でオレを誘惑してくるけど…。
あんな罰ゲームみたいなのは、もう懲り懲りなんだよ~!
「まあ……確かに、そうだな。」
「はぁー、やっと納得してくれたか…」
オレの必死な説得がようやく通じたのか。
ふむと、口元に手をやり考え耽るルーファス。
安堵したオレは胸を撫で下ろし、一息吐いたのだが…。
ルーファスという男には、何処までも自覚というものがないようで。ふわりと目を細め、オレの視線をその瞳で縫い留めると…
「セツのあの姿は、誰にも見せたくはないからな…」
ましてや大衆に晒すなんて勿体ない。
ならば私の記憶にだけに留めておこう…などと。
コイツは悪びれるでなく、それを本音として語りだすもんだから。
何度だってこのオレを、容易に惑わせてしまうんだ。
「ばっ、かやろッ…」
もう、どうしてくれんだ…。
こんなことばっかすっから、お前のコトどんどん好きになっちゃうじゃんか。
今のオレ、顔とかヤバくないかな…?
ドキドキし過ぎて、心臓が沸騰しちゃいそうだ…。
も~頭ん中グチャグチャで…訳も分からず泣きそうになっちゃってんのとか、ルーファスが好きなコトだとか、さ。
色々バレちゃったりなんかしたら、どうすりゃいいか分かんないよ~…
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