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それをなんとか誤魔化すために、態と素っ気なくして俯いてたら。
こんな時だけ無自覚に加え、天然なコイツは…
またもや何か勘違いをし始めて…。
「セツ、少し顔が赤いようだが…大丈夫か?」
オレにはとことん過保護に出来てるルーファスは、オレへと近付き…徐に頬へと手を伸ばしてきて。
急に触れられたオレは、判りやすいぐらいドキリとして肩を揺らす。
と─────
「ッ…!!」
「ん……やはり少し熱いな。」
熱でもあるんじゃないかと、心配するルーファスに。
いやいやコレはどうみてもお前のせいだろ!って、全力でツッコミを入れたくなるのを、必死で堪える。
だってだってコイツってば、当たり前みたくオレのおでこに…自分のをそのっ、ぴったりくっつけてくるからさ!…しかもくっつけたまんま、目の前で喋ってくんだもん。
もう~…オレの心臓、軽く限界突破してるんですけどっ?
「夜も遅いし、一応舞踏会も控えているからな…」
身体に障っては毒だと告げ、オレをベッドへと誘う。
「無理をせず、ゆっくり休むのだぞ?」
ふんわりと布団を被せ、オレの頭を撫でてから。
足早に去ろうとするルーファスに。限界だと謳っておきながら、いざ離れられるとやはり名残惜しくて…
「…セツ?」
ついその腕に、手を伸ばしてしまう。
「あ、そのっ…」
本当は、毎日のように想ってた。
コイツが夜会いに来てくれて、部屋を出てく瞬間はいつも…。城下での事件があってからは、その不安も重なって更に強く鮮明に。
こうして恋心を自覚してしまってはもう、一秒だって離れず傍にいて欲しい…だなんて、我が儘を思うまでに。
ルーファスに抱く気持ちは、止 まることを知らず…光の速さで、どんどん膨らんでいくんだ。
「セツ…?」
手を引いたはいいものの、その言い訳がみつからず。視線を布団半分に、下へと彷徨わす。
そんなオレを見下ろすルーファスは、ベッドの前に跪くと顔を覗き込んできて。
「ひとりでは…不安、か?」
弾かれ見上げれば、苦笑混じりに目を細める…愛しい人。
きっとオレがあの日のことをトラウマに、度々夢で魘 されてたのを、コイツは知ってただろうから。
罪悪感からか、少しだけ悲しそうな顔を浮かべてたけど…。遠慮がちにオレの手を取ると、安心させるよう両のそれで、優しく優しく包み込んでくれた。
「ならばセツが眠りにつくまで、私が傍にいるから…」
だから安心して休むといい、そうルーファスは子守唄みたいに囁いて。ふわりと微笑む。
(ああ…やっぱり好きだ。)
触れる温もりと脈を感じながら、ゆっくり目を閉じる。
正直ドキドキしちゃってて、すぐには眠れそうになかったけど…。大好きなその手で優しく撫でられ…心地好さに身を委ね、甘えてしまえば。
自ずと意識は穏やかな微睡みへと、誘 われていく。
「セツ…」
「ん…」
きっと今夜は良い夢が見れそう…
幸せに包まれ、意識を緩やかに手放していくと…。
夢現 の真ん中で、ルーファスに名を呼ばれたような気がしたけど。
「………だ…」
その後もルーファスが何か言ってたのに、それはもう聞き取れなくて。
代わりに夢の中で、笑ってみせたら…
額の辺りに一度だけ。
柔らかな感触が、降りたような気がした。
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