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⑲
「平気か…?」
「ん……ごめん…」
一頻 り泣いては、やっとのことで落ち着きを取り戻し。かと思えば忙しくも、羞恥にかられ…再び俯く。
平常心になれば、これまでに色んなことをやらかしてるんだった、と再認識しちゃったもんだから。
出来ればこのまま消えてしまいたいと、罪悪感やら羞恥心に苛まれてたんだけど…
「ならば、その…訊いてもいいだろうか?」
“コレ“は一体どういう事なのだ、と。
ルーファスは早速とばかりにオレの黒髪…実際には、カツラの方だけど。それへと遠慮がちに触れてきて。
地毛でもないのに、ルーファスのその仕草だけで。ドキドキしてしまうオレの身体は、いちいち熱に浮かされる。
「女性物のドレスを着るのは、嫌だったのだろう…?」
「あ、う…これは、そのっ…」
素直にぶっちゃければ、性別女子に嫉妬して。
綺麗なドレスを着て、ちょっとでもソレに近付ければ。オレもルーファスとダンスを踊れたのかな…とか、妄想してしまったんだけど。
…んなこと言えるわけがないから。
咄嗟に『女王様のせっかくのご好意を、無下には出来ないし…タンスの肥やしにするには勿体無いから、1回くらい着た方が良いかな~と思って』…だとか、適当な言い訳をしてみせるのだけど…
下手くそな猿芝居では、見透かされてるのか。
ルーファスは苦笑混じりに、オレの顔を覗き込んできた。
「うう~…わ、笑いたきゃ笑えよっ!」
あれだけ嫌がっておきながら、自分でもどうかしてるって思うし…。
なのにルーファスは、からかうわけでもなく。
それどころか─────
「ん…良く似合ってる。綺麗だ。」
なんて囁いて、黒髪にキスなんぞ落としてくるんだから…ズルイ。
しかもコイツは今、パーティー用の華やかな衣装に身を包んでて。いつもの清潔感溢るる好青年な雰囲気とはまた違い、大人の色香を惜しげもなく放ちまくっててるもんだから…。
それはもう、最強としか言えないくらい無茶苦茶カッコ良くって。
オレ、卒倒しちゃいそうだよ…
「もう…」
「ふふ、恥じらっているのか…セツ?」
意識しまくってるのを誤魔化すために、コイツの胸におでこをグリグリ押し付ければ。仕返しとばかりに、ぎゅっと抱き締められちゃって…。
耳元に、少しだけ意地悪な囁きを落とされる。
と…次には何を思ったのか、急に身体を離されて。
首を傾げ、成り行きを見守ってたら…
ルーファスはオレの前で、恭しく跪いて見せた。
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