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「平気か…?」 「ん……ごめん…」 一頻(ひとしき)り泣いては、やっとのことで落ち着きを取り戻し。かと思えば忙しくも、羞恥にかられ…再び俯く。 平常心になれば、これまでに色んなことをやらかしてるんだった、と再認識しちゃったもんだから。 出来ればこのまま消えてしまいたいと、罪悪感やら羞恥心に苛まれてたんだけど… 「ならば、その…訊いてもいいだろうか?」 “コレ“は一体どういう事なのだ、と。 ルーファスは早速とばかりにオレの黒髪…実際には、カツラの方だけど。それへと遠慮がちに触れてきて。 地毛でもないのに、ルーファスのその仕草だけで。ドキドキしてしまうオレの身体は、いちいち熱に浮かされる。 「女性物のドレスを着るのは、嫌だったのだろう…?」 「あ、う…これは、そのっ…」 素直にぶっちゃければ、性別女子に嫉妬して。 綺麗なドレスを着て、ちょっとでもソレに近付ければ。オレもルーファスとダンスを踊れたのかな…とか、妄想してしまったんだけど。 …んなこと言えるわけがないから。 咄嗟に『女王様のせっかくのご好意を、無下には出来ないし…タンスの肥やしにするには勿体無いから、1回くらい着た方が良いかな~と思って』…だとか、適当な言い訳をしてみせるのだけど… 下手くそな猿芝居では、見透かされてるのか。 ルーファスは苦笑混じりに、オレの顔を覗き込んできた。 「うう~…わ、笑いたきゃ笑えよっ!」 あれだけ嫌がっておきながら、自分でもどうかしてるって思うし…。 なのにルーファスは、からかうわけでもなく。 それどころか───── 「ん…良く似合ってる。綺麗だ。」 なんて囁いて、黒髪にキスなんぞ落としてくるんだから…ズルイ。 しかもコイツは今、パーティー用の華やかな衣装に身を包んでて。いつもの清潔感溢るる好青年な雰囲気とはまた違い、大人の色香を惜しげもなく放ちまくっててるもんだから…。 それはもう、最強としか言えないくらい無茶苦茶カッコ良くって。 オレ、卒倒しちゃいそうだよ… 「もう…」 「ふふ、恥じらっているのか…セツ?」 意識しまくってるのを誤魔化すために、コイツの胸におでこをグリグリ押し付ければ。仕返しとばかりに、ぎゅっと抱き締められちゃって…。 耳元に、少しだけ意地悪な囁きを落とされる。 と…次には何を思ったのか、急に身体を離されて。 首を傾げ、成り行きを見守ってたら… ルーファスはオレの前で、恭しく跪いて見せた。

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