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⑳
「な、に…?」
きょとんとするオレを見つめ、手を差し出すルーファスは。
「よろしければ一曲、私 と踊って頂けませんか?」
「ッ……!」
まるでお姫様にでもするみたいに。
ルーファスはうっとりとした微笑みをオレへと向け、乞い求めてくる。
そんな願ってもない申し出とは云えど…
『ハイ喜んで!』などと、直ぐに返せるわけもなく。
どうしようかと、真っ赤な顔でモジモジしていたら…。
「わわっ…!?」
突然ルーファスの方から、手を引かれて。
そのまま優雅に歩き出したかと思ったら…
開けっ放しだったバルコニーの方へと、誘 われてしまった。
「ここならば、ダンスの音楽も聞こえるだろう?」
「え、でもっ…」
いきなりダンスを踊るとか。
そりゃあ、オレ的には大歓迎ではあるけども。
キラキラナイトなルーファス様との近すぎる距離感とか、メチャクチャ良い匂いするな~とか…。
頭ん中いっぱいいっぱいで踊るとか、まずムリなんですけど~!?
それでもルーファスは気にすることなく、オレを優雅にリードしていき。
「大丈夫、私に全てを委ねてくれて構わないから…」
「っ……」
近い、ヤバい、ヤバい、
心臓の音、聞こえちゃうかも─────…
こんなくっついてしまったらさ。
オレのダダ漏れな下心なんて、隠しようがないんですけどっ…。
されど真っ直ぐとオレだけに注がれる、ルーファスの熱い眼差しに。身も心も、すっかり捕らわれてしまったならば…。
次にはもう、そんな些細なことなんて…
どうでもよくなってしまうんだ。
遠くから届く微かな宴の音楽に合わせ、共に舞う。
…と言っても、オレはただルーファスにされるがままだったけど…。そのおかげか、ちゃんとダンスになってるから不思議だ。
「やっと笑ったな…。」
「え?」
「お前のその…笑顔が見られただけで、充分だ。」
戻って来て良かったと、ルーファスは嬉しそうに笑う。
更には、
「それにまた────…セツの愛らしい姿を、独り占め出来たのだから…な?」
「なっ…!?」
…これがまさに、イケメンの余裕ってヤツだろうか。
オレの愛しの騎士様は、悪戯に微笑み。
砂糖菓子みたいな台詞を、次から次へとブン投げて寄越すもんだから。
言っとくけど、こんなバカみたいなカッコして喜ぶのなんて、お前くらいなもんなんだぞ?
…そんなこと言ったら、ルーファスはまた否定してくれんだろうけどもさ。
だから…
「心配しなくても、こんな姿…誰にも見せやしないよ。」
″お前以外には…″
照れくさくて、わざとぞんざいに返したら。
ルーファスは一瞬黙って、目を丸くしたけれど。
「ならば、安心だな…」
答えるコイツは、嬉しそうに目を細めて。
月明かりに柔 く、はにかんで見せるのだった。
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