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「おお…スッゲェ、マジ治ってんじゃんか~セツ!」 自身の身体を確かめながら。途端に歓喜したよう、オレの手を握ってくるジーナに安堵するけど。 「うーん…そんなスゴイのかなぁ…」 や、現実に回復魔法使えたってだけで、充分スゴイと思うよ? けどさ…実際オレが治したジーナの怪我なんて、擦り傷やちょっとしたアザ程度であって。それこそ数日あれば、すぐ治っちゃうようなレベルだからさ。 よくある漫画やゲームとかのイメージもある所為か、こんくらい大したことないんじゃっ…て。思っちゃうんだけれど…。 「何言ってるのセツ、これってスッゴいことなんだよ~!」 謙遜するオレに、今度はロロが興奮気味に物申す。 このグローシアでは、オレがいた現実世界で主流だったファンタジーな世界観とは、一風変わってて。 基礎魔法…地水火風なんていう自然界の力を借りた属性魔法の方が、一般的であり。…と言っても、みんながみんな当たり前に魔法をバンバン使えるわけでも、ないみたいだけど。 多少なりとも素養さえあれば、使えちゃうもんなんだと、ロロは珍しく熱弁する。 「中でも治癒や瀕死状態にも対応出来るような高位の蘇生魔法は、特別だからね~。」 前にも言ったように、魔術の才能ではトップクラスを誇るロロでさえ、大した怪我は治せないらしい。 全く使えないわけでも無いが…例えばロロが、単独で回復魔法を使用した場合。今のオレがやってのけたレベルに、ちょっと色を付けた程度だって言うし。 まあロロが回復系ではなく、攻撃タイプの魔導騎士ってのもあるかもだけど。初心者なオレからすれば、ほぼ全属性使いこなしてるロロの方が、逆にスゴいんじゃないかなって思えるもんね。 …てなことで、瀕死レベルを癒す回復魔法はそれこそ、ロロ級の高位術者が何人も集まり。協力して魔法を発動させるなりしないと、まず治せないって話だし。 しかも神子だけが、それをひとりでやってのけてたっていうんだから。そりゃ崇拝されるわけだよね~…って、 その神子、オレなんですけど…? 「この力こそが、神子が奇跡と呼ばれる由縁だからね。慣れないセツはまだ、実感はないだろうけれど。自信持って良いと思うよ?」 それでも半信半疑なオレに、アシュがウインクしながら背中を押してくれる。 いちいちキザなヤツだけど、コレは彼なりの優しさで。 「神子の貴方にとっては、まだまだ第一段階に過ぎませんがね…」 とりあえず合格と言ったところでしょうか、と。 ヴィンも彼らしい物言いでオレを励ましてくれた。 何より… 「やはり、セツは凄いな…。」 ルーがそう言って笑ってくれるのが、一番嬉しいから。 単純だけど、一歩前進出来たことを実感して。 オレはほっと胸を…撫で下ろすのだった。 「ふふふ…セツ、今度はぜひ僕の傷を癒してほしいなぁ。」 「ん?アシュもどこか怪我したのか?」 「そうそう。この傷は、セツにしか癒やせないからねぇ?なんだったら今から僕の部屋でふたりきりで…」 「アシュレイ殿!!」 相変わらず賑やかな毎日で。 平凡だったオレにとって、少し前までの現実を忘れてしまいそうなくらい…ここでの生活が、当たり前の日常となりつつある。 いっそこのまま。みんなとの暮らしが、何事もなく永遠に続けばいいのに。 そんな幸せを噛み締める矢先に。 嫌なことは必ず起こるものなんだ、と…。 後になってまたオレは、思い知ることになるんだ。

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