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⑥
「はぁ───…行きたくないな~…」
「仕方ないでしょう。体調不良とはいえ、神子としての信用を落としてしまったのですから。」
ヴィンに促され、重い足取りで歩くオレと守護騎士一行は。またまた宮殿へと駆り出されていた。
神子が公の場にて、初めて御披露目されるかもしれない…ということで。元々小規模の予定だった舞踏会には、異例な数の参加者が殺到したのだそう。
しかしながら、オレが体調不良で…ってそれは便宜上の言い訳だったんだけども。
ぶっちゃけサボってドタキャンしてしまった所為で、神子に対しお偉いさん方の不信感を買ってしまったみたいだ。
神子の歴史が始まって以来、最大の珍事。
神子がオレ…─────男ってだけで。
真偽云々どころか、のっけから異端視されてるようだったし。神子の存在そのものに対し、疑問視する派閥も少なからずあるっていうんだから…。
今回の一件を理由に、元から反抗的だった一部の重臣達が。神子崇拝者であるアリシア様に対し、ここぞとばかりにイチャモン付けて来たんだそうな。
元々パーティーへの参加は、自由と言われていたし…そこはなんとかアリシア様が庇ってくれたから。舞踏会でもそれほど大した騒ぎには、ならなかったみたいだけど…。
状況的に見ても、これ以上神子を出し惜しみするわけには、いかなくなっちゃったもんだから────…
後は推して知るべし、である。
(みんなにも迷惑かけちゃったしな…)
オレだけ責められるなら、よかったんだけど…。
オレを心配したルーファスまで、途中退席させちゃったし。
それ以前に、城下でのあの一件もあっただろ?
したら守護騎士の責任能力まで、問われ始めちゃってさ…。
今更だけど…自分がこの世界にとって、重要な役割を担ってるんだってことを。今回ばかりは嫌ってほど、思い知らされたんだ。
「暫し此方にて、お待ち下さい。」
謁見の間に入ると。
今までと違い、如何にも偉そうな雰囲気の人達がズラリと並んでいて。嫌でも、好奇の目に晒される。
今日に限っては、あのジーナでさえ口を慎み…
女王様が来るのを、固い表情で待ち構えていた。
「なんだか、みんなピリピリしてるね…」
ロロが不安げに耳打ちしてきて。
オレは改めて周りを見渡す。
この世界に来てから、何度か謁見してきたけれど。これだけの人数が勢揃いしてるのは初めてで…。
ヘタレなオレはあっさり雰囲気に飲まれてしまい、萎縮する。
聞いた話しだと、今日集まる顔ぶれは…
主に政を司る宰相や、騎士団・治安部隊などの軍事関係を統べる元帥に始まり。
貴族中心で構成された貴族院の大臣達…そして、ルーファス達が元々所属していた各騎士団の団長らも、部下を数人連れ参列していた。
こういう時、お約束というか…如何にも腹黒そうな印象の貴族院のオッサン達が、オレの方をジロリと睨んできて。
その度にヒソヒソと、何か耳打ちし合う。
神子と言えば世界を救う救世主であり。
国総出で守護すべき、尊い存在なのだと…みんなからはそう、教えてもらってたのに。
国の上層部分に関わっているハズの貴族院達の視線からは、そんな雰囲気なんて微塵も感じられやしない。
逆に騎士団の人達だとルーファス達と同じよう、守護騎士になることを志してたわけだから。敵意とかは全然無さそうだけど…。
ああいう大人達と関わっても、良いことなんか絶対あるわけが無いから。
これからどういった扱いを受けるのかって思ったら…考えただけで、足が竦んでしまいそうだ。
いい知れぬ不安と、あからさまな猜疑 の眼差しに晒されるオレは。
堪らなく不安になり、隣に立つルーファスの袖を無意識に掴んでしまったが…
「大丈夫だ、セツ。」
凜とした声に弾かれ見上げた、大好きな顔が。安心しろって優しく微笑んでくれたから…。
オレもうんって笑顔で返し、なんとか平静を保つことが出来たんだ。
でも…
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