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⑦
『″アレ″が噂の神子…本当に男なのか?一見すると、女子 に見えなくてもないが…』
『未だそれらしき″覚醒″の兆候も見られぬようだし…正直疑わしいものだな…』
ヒソヒソと、隠そうともしない敵意にツキリと胸が痛む。
『神子が男児だなどと、前代未聞であろう?神子の特徴が黒髪だからといって早々に決めつけるのは、如何なものか…』
『あのように軟弱そうな若造が、世界を救えるとは────』
「ッ……!」
「やめておきなさい、ルー。」
オレが泣きそうな顔で俯いていると。
見かねたルーファスが一歩踏み出ようとしたんだけれど…。
口を開く前に、ヴィンセントが静かな声でそれを制す。
納得がいかないルーは、反論するようヴィンを見やるものの…。彼はただ黙って首を横に振るだけで。
ルーは奥歯を噛み締めながらも、この場は素直に従った。
「何かね、騒々しい。」
そんな遣り取りを目の当たりにする、如何にもな風貌のオッサン…多分かなり上の役職っぽい男が。わざとらしく口を挟んでくる。
「いえ、お騒がせして申し訳ありません。」
しかし、そこはヴィンセント。
あくまで冷静に対応してみせると。その男はさも歯痒そうに鼻を鳴らしながら、ギロリと睨み付けてきた。
『全く…女王陛下の選定を賜りし、守護騎士と云えど所詮は軍人。やはり野蛮な連中ばかりなのだな。国を象徴する存在だというのに…“特級騎士団”とは、ああいう輩しかおらんのか?』
『特級騎士団は神子の守護を目的に創設され、入隊条件も厳しく狭き門だと言われているが…。所詮は一般人すら混在するような無法地帯、秩序も何もあったものでは無いのだろう。』
『それに神子は代々、清廉な乙女だけが召喚されていたとされるが…』
『神子まで男とあっては…崇高なる守護騎士の質も、暴漢に成り下がってしまうのだな…』
その男を皮切りに、陰口だったものが更に堂々としたものへと変わっていく。
なんでこんな冷遇を受けなきゃならないんだろ…
幾らなんでも酷くないか?オレだって、自ら望んで神子になったわけじゃないのにさ…。
知らない世界でいつも不安でいっぱいで。神子ってだけで、暴漢にまで襲われちゃうし…。
不自由はしてないにしろ制約だらけの毎日に、ウンザリするぐらい勉強だってしてるんだ。
それでも、ルー達や女王様達が優しく接してしてくれたから。神子としての使命を果たそうって、ようやく前向きになれてきたとこだったんだ。
なのに…
『神子の判別など『黒髪』という箇所しかないのであろう?ならばアレが神子である確証など、無いのでは?』
『しかし伝承によると守護騎士には、それを見極める能力 があると聞くが。彼奴らを見ていると…それとて真実かどうか、疑わしいものだな。』
その場に集まる全員ではないにしろ、半数近く…如何にも頭の固そうな狸親父らが。不満を隠そうともせず吐き捨てる。
この扱いには、さすがに腹が立ってきたけど。
ここでオレが下手に口を開こうもんなら、ヴィンの気遣いもルーの我慢も…みんなムダになってしまう。
そう思い、なんとか我慢しようとしたのだけど…
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