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「これ以上、セツを…神子を愚弄するのは、止めて頂きたい!」 「ルー…」 本来なら、こういった場で声を荒げるようなヤツじゃないんだ。 だってコイツは、人一倍真面目で忠誠心が強くて。誰より優しい男なのだから。 なのに、なんで… 「私は守護騎士の名において、彼が真の神子であると確信したと宣言する。これは守護騎士に選定された我々が、神より授かりし力…謂わば神託と言っても過言ではありません!」 ルーファスの言葉に、ジーナ達は黙って頷く。 今度ばかりは、ヴィンも止めようとはしなかった。 「貴様…たかが騎士風情の身分で、我ら貴族院に楯突くというのか!」 ルーの毅然とした態度に、憤慨する重臣達は。 真っ赤な顔で一気に捲し立てる。 「そういう貴様は…先日城下にて神子の警護をしていながら、軽率にも傍を離れ怪我を負わせたそうではないか!」 「守護騎士と謳いながら、その責務も真面(まとも)に果たすことも出来ぬ半人前のクセに…偉そうなことをぬかすでない!」 理不尽に罵声を浴びせられ、ルーは表情を険しくさせながらも押し黙る。そんなルーに対し、男は勝ち誇ったよう嘲笑うと、これ見よがしに罵り出すのだが…。 ルーはそれでも、何も言い返さない。から… 「ルーは何も悪くないッ…!!」 こんなの黙っていられなくて。 オレは怒りを露に、男達を睨み付ける。 初めて口火を切った″神子″の姿に、文官達は化物でも見るような目を向けてくるけれど。 オレは怯まず挑んだ。 「あれはっ!…オレの不注意が招いたこと、です。むしろルーがっ…守護騎士の彼がいなければオレは、無事では済まなかったと思います。だからっ…」 ルーを責めるのは止めてほしい、そう必死に訴えたのだけど。 「神子も神子で無責任というか、軽率な行動が目につきますな。」 「確かに。公然でないとはいえ、先日の舞踏会も結局姿を見せませんでしたしねぇ…」 こういう人達は世界を救う神子であれ何であれ、余所者をタダで認めようとせず。 オレがどう足掻こうが、お構い無し。聞く耳なんて端からないのか…酷く冷めた目で睨んでは、蹴落しに掛かる。 ホントは何か言い返してやりたいけど。 コイツらには、何を言っても無意味な気がして… なんだか無性にやるせなかった。 「神子殿に対し、少々言動が過ぎるのでは───」 口を慎まない彼らを見かねてか、騎士団側からオレ達を庇うような声が上がったけれど。 政治家っていうのは端から軍人を見下し、差別する伏があるからか…それらも鼻先で一蹴してしまい。 更に身勝手な持論を、加速させていった。

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