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こんな時、何も出来ない自分が歯痒くて。 悔しさに目頭が熱くなる。 「あ───…狸共が、マジウッゼェなぁ…」 「ホント、頭悪過ぎて嫌になっちゃうよね。」 「ジーナ、ロロ…」 それはみんなも同じみたいで。場も顧みず、舌打ちするジーナに…珍しくロロまでもが怒りを露わにして。 「なんだその態度は…貴様ら全員、どうなっても知らぬぞ!」 いよいよ収拾がつかなくなり、重臣達の非難は激化する一方。 こんな時、頼りになるのはヴィンセントか、最年長のアシュレイなのだろうけど… 「政治家という生き物は、全く以て融通が利かないから困るよねぇ。」 「まあ、事実なので否定はしませんが…ですよ、アシュ殿。」 まさかこのふたりまでもが重臣達に向け、挑発的な事を言い出しちゃったもんだから…驚きだ。 アシュはまだ、分かるにしても。 さっきまで止める側だったヴィンまでが、あんな態度に出るなんて。いつでも冷静で、何事にも怯まず客観的に判断してさ…なのに。 一見すると無表情だけど。 アレはきっと、かなり怒ってるんだろうなぁ…。 でも、正直嬉しかった。 守護騎士で色々立場もあるのにさ…。 みんながオレのために怒ってくれたんだって、思ったら…ホント泣いちゃいそうだ。 「たかが騎士の…成り上がりで地位を得ただけの凡俗共が、生意気な口を…このままではタダでは済まされぬぞ!」 あの一番偉そうな男が、青筋を立て激怒する。 他の文官達もコイツの顔色見て、急に騒ぎ出してたし…。多分この場に集まった中では、相当位の高い役職なんだろう。 いくら、アイツらが先に酷いことを言ったからって。謁見の場で、こんな騒ぎ起こしちゃったらさ。 オレ達の立場とか、メチャクチャ危ういんじゃないかって。ちょっと心配になってきたんだけど… 「おやめなさい、グリモア。」 「陛下っ…!」 鶴の一声とは、まさにこのこと。 ぴしゃりと放たれたその声に、喧々囂々(けんけんごうごう)としていた場の空気が冷たく一変して。 その場に居合わせた者は皆…すぐさま息を飲み込み、静まり返ってしまった。

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