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「はあ───~…」 「セツ殿、とんだ無礼を…改めて謝罪致します。」 安堵して思わずしゃがみ込むと、アリシア様が再度頭を垂れるので。オレは慌てて立ち上がり、それを制する。 「や、オレは別に…」 気にしてないと言ったら、嘘になるけど…。 元はと言えば、オレの軽率な行動が原因なんだし。 「貴方達も、どうか気を悪くしないでね?」 「陛下のお心遣い…痛み入ります。」 己の身分も省みず、率直に非を詫びる女王様に。 ルーファス達も敬意を表し、一礼で以て応えた。 やっぱり国の頂点に立つアリシア様は、人格者だよなぁ。 「さて…皆を集め、セツ殿をお呼び立てした理由は、ふたつ。」 ひとつは、さっきの遣り取りでなんとなく済んでしまったらしい。 オレが神子であることは、改まって公にこそしてないものの…既に広まりつつあるのは、周知の沙汰で。 神子といった人智を超えるような存在は、下手に隠し立てしちゃうと。女王様への不信に繋がりかねないのだという。 そうなってくると、神子を巡っての争い事なんかを引き起こす可能性も出てくるわけで…。そろそろ公にするべとの判断に、至ったのだそうな。 あのグリモアというオッサン───貴族院てとこの、大臣らしいんだけど。ソイツらを筆頭に、女王や神子に反感を抱いてる輩も結構いるみたいだからね…。 一般人のオレからすれば、アリシア様みたいに気さくな人、まさに理想の女王様!って感じするんだけどなぁ。 野心でお腹ん中真っ黒々な連中とは。 まず相容れることなんて無いのだろう。 とはいえ、更に溝が深まった感じは否めないけれど。ヴィンがこっそり耳打ちするには、「不穏分子は叩いて焙り出すのが一番ですからね。」…だそうだ。 「そして、ここからが本題です。」 神妙な面持ちの女王様に、皆が息を呑む。 「近年、先代の神子が修繕していた結界の一部が弱まり。そこから瘴気が増加…伴って魔族等の力が戻りつつあると…監視中の騎士団から報告がございました。」 調査団の報告によると、魔族や魔物の力の根源である瘴気量が近年、上昇傾向にあり…それらが活性化。 その結果、今までは安全だった地域や町村付近まで、少しずつだが被害が出始めているのだそうだ。

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