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「故に…今回、“特級騎士団”の各隊から人員を選出し。小規模にて編成した精鋭部隊と共に、″聖域″への視察を検討しております。…そこで神子であるセツ殿にも、ご同行をお願いしたいのですが…」 「オレが、ですか…?」 急な展開に、戸惑いを隠せず言葉を濁すと。 「目的地は、ここから最も近い場所にある聖域…神子の結界が施された石碑が存在する、“神淵(しんふち)の森”にございます。セツ殿の身は、我が国の騎士…特級騎士団が最善を尽くし、お護り致します。が…」 それでも、100パーセントの保障はないと。 アリシア様は続ける。 「神子である以上いつ何時、命を狙われるやも知れません。只でさえセツ殿の存在は、民衆にさえ広く認知されつつありますから…」 それを踏まえて尚、同行してほしいのだと。 女王様は敢えてオレにリスクを語った上で嘆願する。 だけどそれは権力を振りかざし、強制させるわけじゃなく。あくまでオレと対等の立場で、話を進めてくれるから…。 だからこそ、安易な選択は出来ないなって。 オレは敢えて即答はせず、暫し瞑目しながら思案する。 …と、そこでルーファスが徐に口を挟む。 「陛下、よろしいでしょうか?」 「申してみなさい、ルーファス。」 すっと一歩前へと出たルーが、女王様に向き直り。真剣な眼差しで告げる。 「セツ…神子はまだ、完全には覚醒しておりません。少しずつ…いえ、着実に神子としての力に、目覚め始めてはおりますが…」 そんなオレを、危険だと判っていて。外に出すのは時期尚早ではないかと。 神子のお役目も勿論大事なのだけど… ルーはあくまで、オレの身を一番に案じてくれていて。女王様相手にも関わらず、神妙な面持ちで進言していた。 それにはアリシア様も頷いてくれたけど。 「それも重々承知の上。しかし、事態は思うより深刻なのです。」 被害が出てからでは遅いのだと、女王様は憂う。 「結界が施された場所は、歴代の神子の力が今尚留まる神聖な領域。セツ殿が其方へ赴けば、何かしら力を得るきっかけに…なるやもしれません。」 それは過去の神子関連の文献に基づいた、推察でしかなかったが。少しでも可能性があるならば…と、アリシア様は強く訴えた。 その言葉には、何より説得力があったから。 「オレ…行きます。」 「セツ…」 戸惑うルーが、じっとこっちを見てきて。 オレは黙って、大丈夫だからと笑ってみせる。 「セツ殿…本当に、よろしいのですか?」 騎士団が守ると言っても、そこは魔物も蔓延る危険な場所。何が起こるかは判らない、命の保障だってそうだ。 それでも、自ら死地へと赴くのか… 当然、怖いに決まってる。 それは街で襲われた時に、嫌ってほど味わったし。みんなが心配するから…平気なフリはしてたけど。 本当は今でもたまに、夢で(うな)されるくらいなんだ。……って、ルーには最初からバレてるけどね。 でも、あれだってまだ序の口。 街にいたゴロツキ…ごく普通の人間に、襲われただけに過ぎない。 外の世界には、それこそオレの想像を遥かに超えるような、恐ろしい魔物や魔族が沢山いるって言うんだから。 戦えないオレには、無謀な選択肢でしかないんだろうな。 それでも… 「オレには、みんながいるから。」 隣のルーを仰ぎ。ロロにジーナ、それからアシュとヴィンを順番に見やれば。みんなも応えるよう、強く頷いてくれる。 そんな頼もしい仲間の存在は… 不甲斐ないオレにも、勇気を与えてくれるんだ。 「だから、行きます。」 強く自分を保って、そう女王様に応えれば。 「セツ殿…慈悲深き神子の温情、心より感謝至します。」 感謝を述べたアリシア様の瞳は、キラキラとした涙で輝いて見えた。

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