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「神子殿!」 謁見が終わって帰り際、広間を出た所で声をかけられて。振り返ると…紺色の鎧に身を包んだ騎士さんが、オレの元へと駆け寄って来る。 「お初にお目にかかります。私は特級騎士団第1部隊所属、団長を務めております、オリバー・ストレングスと申します。」 「あ、貴方はさっきの…」 オレの前で颯爽と跪き、名乗りを上げたのは… あのグリモアって男が絡んできた時、唯一それを止めようとしてくれた…騎士さんで。 ルー達が守護騎士になる前に、それぞれ所属していた団とはまた異なるものの…みんなにとっては大先輩にあたる人物、なのだそう。 しかも騎士達の中ではトップクラスの実力にして、性格も誠実な…超が付くほどの人格者。 守護騎士が決まる前は、まさにその最有力候補者とまで噂されていた…誰もが憧れる、騎士界のスーパースター的存在なのだ────と。 後で誇らしげに詳しく語ってくれたのは、ジーナなんだが。 ちなみにこの人も、あのゲームに出てきていた登場人物だった気がするんだけど。 確か肩書きだけの、イメージ絵も名前すらもないような脇役キャラだったはずなので…。細かい人物像なんかは、オレも殆ど知らなかった。 そんな彼に、ルー達は恭しく一礼して返す。 さっきはグリモアの所為で、周りを気にする余裕なんてなかったけど。 改めて彼…騎士団長のオリバーさんを見やると。 これまたルーファス達に負けず劣らずの超絶美形で。短く切った緩い茶寄りの金髪に、明るめのエメラルド色な瞳が特徴的な…いかにも爽やか体育会系の好青年、といった印象を覚える。 体格や身長は、ルーよりも更にひと回り以上ガッチリとしていて。大人の落ち着いた物腰や、醸し出す雰囲気といい…年齢はアシュよりも少し上のように感じた。 まさに絵に描いたような、超絶美形騎士団長様々のご登場に。一瞬呆けてしまったが…オレが慌てて立つよう促すと、彼は白い歯を見せ爽やかに微笑んだ。 「先程は…神子殿のお力になれず、申し訳ありませんでした。私も皆も、グリモア殿を止めたい一心でしたが…」 騎士の中でも、位が高い人は沢山いるだろうけれど。グリモアはフェレスティナでもかなり上位の人間らしくて。貴族院でも頂点にあたる大臣職であり、政治家あるあるというか…あからさま騎士とか軍人の(たぐい)を、見下してるように思える。 なのでいくらオリバーさんが、騎士団長と云えど。ルー達みたく守護騎士の特権が、あるわけじゃないだろうから…。ああいうお偉いさんに意見するだけでも、色々と難しかったと思うんだよね。 それでもあの時は、黙ってられなかったんだろう。彼は悔しげに苦笑う。 「そんな…お気持ちだけで、ありがたいです。」 申し訳ないと頭を下げるオリバーさんに恐縮し、慌てて返す。 「いえ…我々は彼らのように守護騎士として、貴方のお傍で守護する事は叶いませんが…」 神子を尊ぶ志はルーファス達と同じなのだと、オリバーさんは熱く説く。彼の後ろに控える騎士達も賛同し、各々頷いていた。 「ですから…聖域視察での護衛は、どうぞお任せ下さい。我々騎士団は身命を賭して、神子殿をお護り致しますゆえ!」 「オリバーさん…」 さっきあんな事があった後だから、余計にじんときちゃった。 だってさ、こんな風に神子を慕って声を掛けてくれる人は…神殿とかでなら、いるにはいたんだけど。いつも裏では異端視され、陰口の対象だったから… 「ありがとうございます…そう言ってもらえると、オレも心強いです。」 オリバーさんの言葉に感激して、思わず彼の手を両手で強く握り締めると。彼は一瞬驚いたのか…ビクリと目を丸くしたあと、照れたように頬を赤らめる。 「オレ、神子としてはまだまだ未熟だし…皆さんの力になれるかは、分からないですけどっ…」 中にはこうして、純粋に応援してくれる人もいるんだなって。それが何よりの励みになるから。 「精一杯頑張りますから!オリバーさんも、騎士の皆さんも…怪我とかしないように気を付けて下さいね?」 『はいっっ!!』 逞しげな騎士達を見上げ、切実にそう告げて。 ビシリと敬礼で返すオリバーさん達に手を振り、オレ達はその場を後にする。 …と、暫くして急にアシュレイがクスクスと笑い始めたもんだから。 オレはきょとんとしながら、彼を振り返った。

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