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ep.10 神淵の森①

      『ホント、幻想的だなあ……』 それはまるで現世で見た、外国映画のワンシーン───寧ろそれを遥かに越える… 壮大で夢のような光景だった。 遥か昔、この世界…グローシアの平穏は、凶悪な魔族や魔物達によって脅かされるようになった。 数の差はあれど、人間や獣人にエルフといった様々な種族が存在する中で。圧倒的な魔力と身体能力を持つ魔族。 それは神の目にも余る程に、脅威となりつつあった。 何物にも破壊的で好戦的な魔族達を、フェレスティナが崇める女神フェレスは嘆いていた。 当時の人間達には、魔族に対抗するだけの戦力が充分に無く。だからといって、神が直接外界に関与することは許されることではなかったから… そこで女神フェレスはグローシアとは因縁の無い、異界の住人に神の加護を授けて。圧倒的な魔族の力を抑え込み、崩れ掛けた世界の均衡を保とうとしたのだそう。 それが歴史に残る、神子の起源。 この世界の理に縛られない別世界の住人…神子は。 奇跡の力を女神から与えられ。魔族の力を封じ込める結界を彼らの力の根源である、瘴気が多く蔓延する地へと施していった。 それにより人間側、神子率いる王国フェレスティナが魔族を退けることに成功し。今日(こんにち)に至るまで、その歴史が覆る事無く…力の均衡は、なんとか保たれているのであった。 歴代の神子は使命を全うした後も、フェレスティナで余生を過ごしており。大抵は守護騎士や王族などと結婚し、子孫を残していったそう。 神子が亡くなっても、結界は暫くは消えないらしいので…。次の神子が召されるまでの数百年程は効果を保ったまま、この世界を守り続けてくれるのだそうだ。 その間も魔族や魔物がいないわけではないけれど。結界の効果がある内は、本来の力が随分と制限されるらしいので。 人間でも充分対抗出来るし。神子が召喚されれば、選ばれた守護騎士にも神子の恩恵が得られるそうだから。魔族もおいそれとは襲ってこれないのだという。 特に神子と結ばれた騎士は、相当な力を得る…とされているからね。 …で、今からオレ達が向かおうとしている場所こそが、結界のひとつが施されている″聖域″と呼ばれる所で。各地に点在する結界の中では最もフェレスティナから近場に存在する、“神淵(しんふち)の森”と呼ばれる場所。 魔族の力を封じるための結界がある主な聖域は、全部で6つ。それらはフェレスティナを中心に東西南北、囲うような形で点在している。 フェレスティナはそのほぼ真ん中に存在しており。ここ…いつもオレが通っていた大神殿にも、神子の結界が張ってあるそうだから。国内では一番安全な場所とも言えるだろう。 結界が施されているという石碑は、フェレスティナの南にある、その神淵の森の奥…聖域にあるんだけど。 この森は、初代の神子が召喚された場所と言い伝えられてて。そこには女神様が造った異界へと通じる道があるとかなんとか…。 んで、女神様が当時のフェレスティナの女王に神子を守るよう、天啓を授けたって云われてる…(ゆかり)の地だったりするわけだ。 まあそこまで細かい設定は、さすがに覚え切れてなかったけど。こういった知識もゲームをプレイしてたから、うっすらとなら記憶にも残っていた。

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