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②
「セツは城下の外に出るのが、初めてになるな。」
「うん。こっちに来てから、ずう~っと宮殿の敷地内でしか生活してなかったからね。」
馬車の中、窓から身を乗り出し眺める外の世界に。
目をキラキラと輝かせ、逐一感嘆するオレのことを。隣に座るルーファスが、微笑ましげに笑いながら声を掛けてくる。
此処が異世界だからかもしれないけど。
大自然の光景も、なんだかより特別なものに見えてくる。
確かそれはこの世界に魔力の源である、″マナ″って言うのが、そこら中に満ち溢れているから…だって。散々読まされた魔導書の中にも、書かれてあったのを思い出した。
マナが濃い場所は、より自然に満ち溢れていて。
そういう場を好む精霊とか妖精とかが、人知れず集まってくるらしいから。
それらがもたらす生命力の美しさは…オレの知る現世での物とは。きっと目に見えて、比べものにならないんだろうな…。
「んー…風、気持ちいーな…」
のんびり旅行気分なんて満喫してる場合じゃないのは、百も承知。
でも、ほんの少しでも良いから…
許された自由な時間を、満喫したいって思う。
だってオレが今まで外出したのって、城下町に一度行ったきりだったからさ。
今回は女王様直々の聖域視察っていう、大義名分があるわけだし?ルーだけじゃなく、守護騎士のみんなも一緒。加えてオリバーさん達特級騎士団も、少数編成ながらついてくれてるからね。
想像以上に、大所帯な気もするけど。
そういった意味では精神的にも幾分余裕があるから…。
初めて目にする外の世界に、オレはちょっとだけワクワクしていた。
オレとルー達守護騎士を乗せた馬車は、女王様の乗る馬車と連なって街道を進んで行く。
てかさ、女王様も一緒に行くって聞いた時はホントびっくりしたよね~。
普通ならさ、危険な場所に王族の…しかも最高権力者が自ら足を運ぶなんて、そうそうないだろ?
けどアリシア様は、いろんな意味でさすがっていうか。異世界の、この国と何の関わりも無いオレを危険な地へ行かせようというのだから。
自分も行かなきゃ筋が通らないだろうって、毅然とお偉いさん方を論破しちゃって…。
こういう所がさ、やっぱり人の心を惹き付けてるんだろうなって…尊敬するよね。
ちなみに…みんなから聞いた話よるとだ。
王族であるアリシア様にも、代々の神子の血が受け継がれているんだそうで。魔力が人一倍高く、また武術に関しても相当な腕前だって話だから。
オレなんかが心配する必要なんて、まず無いのかもしれない。
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