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③
騎士団の騎馬隊に囲まれ、オレ達一行は更に進んで行く。
結界のひとつがあるとされる、神淵 の森。
聖域と呼ばれる場所は、広大な森の奥…結界周辺のことであり。よりその効力が強い一帯を指し示す。
暫く進んでいると、整備されていた街道から、段々と自然な景色へと移り変わり。一行は鬱蒼とした木々のトンネル内へと、進んで行った。
「そろそろだな。」
ルーが外の様子を伺いながら告げる。
フェレスティナから騎馬隊と馬車十数台で、2時間くらいかな。
今回は一応、視察が目的だから。移動速度もそこまで急いでるわけじゃなかったし。
遠征部隊は100人前後の編成らしいけど。車で距離換算したら、街からだって大して離れてないんじゃないかと思う。
それから程なくして、徐々に馬車が速度を落とし始め。小さな嘶きが聞こえたと思うと…ガタンとひと際大きく揺れ、停止する。
暫くすると、扉が開かれて。先日知り合ったばかりの、特級騎士団の団長…オリバーさんがオレへと一礼して。にこりと爽やかに微笑んだ。
「セツ殿。馬車での移動、お疲れではありませんか?」
そう告げて、ごく自然に差し出される手。
あれ…デジャブ?
この展開、ルーファスに初めて会った時と同じような────…えっと、
「あっ、ありがとうございます。馬車なんて初めて乗りましたけど…。その、意外と快適でしたよ!オリバーさん達こそ、お疲れ様です。」
こんなイケメンの…しかもみんなの憧れ騎士団長様、直々の。極上スマイル付きで差し出された手を、無視するわけにもいかず…。
オレはルー達の視線を気にしながらも、おずおずと自身の手を、彼のそれへと重ねる。
照れながらも、ペコリとしてお礼を述べれば…
「いえ。セツ殿をお護りするのが、我らの使命ですので!」
オリバーさんは、キラッキラした笑顔でそう返してくれるのだった。
ルーといい、オリバーさんといい…騎士ってみんな、こんななのかな?
まだ子どものロロやジーナだって、一応騎士なんだけどさ。ルーとオリバーさんは爽やか系で、なんとなくタイプが似てるっていうか…。
こんな風にオレをお姫様みたく扱うから、困る。
歴代の神子はずっと、年頃の女の子だったっていうし。ルーとか特に、神子に強い憧れを抱いてたみたいだから。
例えオレが男でも、それが神子なら分け隔てなく。大事に大事に、扱ってくれちゃうんだろうな…。
オレとしては意識しちゃうし、やっぱり恥ずかしいからさ。人前では、あんまりやらないでほしいけどね…。
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