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「いつもはニコニコしてて優しいけどよ。怒るとマジで怖ぇかんな…?」 気を付けろよって、ジーナがこっそり忠告すれば、 「うふふ、ジーナ?」 「うぅ…」 女王様は、にっこり笑顔を湛えるのだけど。 なんでだろ…笑ってるのに、アリシア様の背後にドス黒いオーラみたいなものが、見えたような気がして。思わず悪寒が走る。 呼ばれたジーナも、あからさまビクビクしちゃってるし…。 これは肝に銘じておこう…と。 オレは心中で、何かを察するのだった。 「時間も限られてますから、本題に参りましょう。」 言われて目的を思い出し、森の方に目をやる。 森の入り口は日の光を受け、木漏れ日が風に揺れ、神々しく煌めいて見えたが…なんとなく、異様な雰囲気を肌で感じる。 神子により施された結界が、この奥にあるらしいけど。ここからではそれ以上の情報は、殆ど判らない。 偵察部隊の騎士さんが説明するに、此処から祠までの距離は、さほど遠くないとは聞いてたものの…。 言い知れぬ不安に駆られるオレは。 正直逃げたくなる気持ちで、いっぱいになってた。 「聖域までの道は…整備こそしていますが、道幅はありませんので。オリバーを筆頭に、騎士団が小隊を組んで先頭と殿(しんがり)を…挟んで神子殿のお傍には、守護騎士を配備させて頂きます。」 残りの騎士は有事に備え、この場で待機するとのこと。 森の中は神子の加護があるため、魔物の類いはいるものの…比較的安全ではあるそうなんだけど。 それでも万が一を考慮して。同行する騎士達は特別編成部隊の中でも、更に選りすぐりの精鋭陣で組まれるらしい。 傍には守護騎士のルー達がいるし、騎士団トップクラスの実力を誇るオリバーさん達だって、ついてくれてるから。 初めての視察で、かなり緊張はしてたけど… これならなんとかなりそうかもって、多少は落ち着いていられた。 「先だって偵察隊に、聖域内を確認させましたが…特に目立った異常は見られませんでした。」 オレの役目は今のところ、結界のある場所まで行くだけ。 大した力もまだ無いから、それが精一杯なんだろうけど。神子の力を直接肌で感じれば、何か掴めるかもしれないし。 要はオレ次第…女王様の引率付きで、これだけ大所帯で来てるんだから。是が非でも、何かしら得るものが欲しいところでは…あるんだけどね。 なぁんて考えてたら、また緊張してきちゃったぞ~…

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