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⑦
「セツ…?」
そんな心情が駄々漏れだったのか、ルーが顔を覗き込んできて。思わず見上げれば…深緑の瞳に惹き寄せられ、捕らわれる。
ルーに見つめられると、やっぱり甘えたくなっちゃうから…。ついときめいてしまう胸を、オレはギュッと鷲掴み、無理やりに抑え付けた。
「…女王様や騎士さん達が、こんな沢山…動いてくれてるから、さ。」
やはり無能のまま、何も出来なかったらどうしようって。頭を過る不安を、無意識に吐き捨ててしまう。
オレはずっと、ただ漫然と生きてきて。
決断力も男らしさもホント皆無で。人にこんな期待されたことなんて、今まで一度も無かったからさ…。
アリサちゃんにフラれた理由だって、そういうとこが原因だったじゃん?
だから…
「セツ…」
今更怖じ気づくオレに、みんなの視線が集まってしまい。神子なんだから、しっかりしなきゃって思えば思うほど…プレッシャーに圧し潰されそうになる。
ああ…またこういうとこ、オレの悪い癖だ。
堪らず泣きそうになるのを隠すため、俯けば。
ルーファスがオレの頭へと、優しく触れてきた。
「私は…神子ではないから。セツが抱えている苦しみを全て理解する事は、叶わないだろう。それでも、」
お前が進む道ならば、何処までも何処へでも。
共に進み、護り続けたいと。
「例え神子としての兆しなど見えなくとも、決して無駄とは思わないし。私は何があろうと、お前の味方だから。」
神子の責任を、代わりに背負うことは出来ないけれど…とも。ルーは悔しげに、噛み締める。
それでもルーファスが、オレの好きな人の言葉が。何より嬉しかったから。
「ルー…」
オレは感極まって溢れそうになる涙を、必死で堪えた。
「ルーの言うとおりだよ!ボクだってセツのこと護ってみせるからね!」
「そーだゾ、ホントお前は隙だらけで危なっかしいからさ。こういう時こそ俺達に甘えて、黙って護られとけばいーんだから。」
ロロがぎゅーっと抱きついてきて。
ジーナも照れ臭そうにしながら、励ましてくれる。
「不安になったら、いつでも僕のところにおいで。優しく慰めてあげるから…ね?」
「そう自分を卑下せずとも、貴方は確実に成長していますから。少しくらい堂々としていても良いと思いますよ。」
アシュとヴィンも彼ららしい言葉で以て、背中を押してくれて。成り行きを見守っていたオリバーさんも、にこやかに賛同しながら、頷く。
「例えここで引き返したとしても、我々は決して貴方を責めたりはしません。」
不安を抱えたままでは、平常心を保てなくなるし。反って逆効果になる可能性も否めないからと、オリバーさんも真剣な眼差しを向けてくる。
「そうですわ、セツ殿。私共が無理を承知で、お願いしたのですから…」
申し訳ないと、アリシア様は苦笑して頭を下げる。
本来なら自らの手で、国を守りたいのだろうに。
それが叶わないからこそ、女王であるアリシア様が…誰よりも悔しい思いをしているんだろうなって思うんだ。
「オレは…」
自分が神子なのは、やっぱり自信は無いけど…それについては、この際受け入れよう。
だからといってプレッシャーがないわけじゃない。今だって、正直押し潰されそうで限界ギリギリだ。
でも、
「オレ、行きます。」
逃げてばかりじゃ、何も変わらないし。
オレだって命懸けで守りたいものがある…から。
決意を胸に、改めてオレはみんなを見渡して。
震えながらもはっきりと、そう応えてみせるのだった。
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