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「…ありがとうございます、セツ殿。」 女王様は破顔して礼を述べると、また深く深く(こうべ)を垂れた。 「では、準備ができ次第出発致しますので。セツ殿もそれまでは、お身体を休めておいて下さいね。」 一時解散となり。騎士達は仮テントを立てたりと、急に慌ただしくなる。 隊を纏めるオリバーさんも森へ向かう騎士達を集め、何やら指示を出していた。 オレとルー達も宛がわれたテントでお言葉に甘え、ひと息吐く。 オレはぼんやりと物思いに耽りながら。指揮を取るオリバーさんや、偵察隊と話し込むアリシア様の姿を…なんとはなしに眺めた。 (ここまで来ちゃったけど、とうとう…って感じだな…) 当たり前のように、各々武器を携えた騎士達の姿を見ていると。小規模とは言われても、軍人がこれだけ大勢集まってるというのは…圧巻で。 嫌でも緊張感を掻き立てられる。 オレのいた日本なんて、比較的平和な国だったから尚更なわけで…。 しかもそれが、オレを守るため…なんだって考えたら。なんだか申し訳ない気持ちで、いっぱいになってしまった。 「…まだ不安は拭えないか?」 オレの隣に座っていたルーが、遠慮がちに声を掛けては苦笑う。 きっとそれは、城下での事件もあったから…だと思う。コイツは人一倍責任感が強いし。あれ以降は更に過保護というか…オレのことを気に掛けてくれるようになってたから。 そういう何気ない優しさは、オレとしてはスゴく救われる。 てか…微妙に距離が近くて、心臓にはものスゴく良くないんですけど…。 「んー…でも平気だよ。」 お前やロロ達みんなが、守ってくれるからさ。 照れ隠しに誤魔化ながら答えれば。ルーは安心したよう表情を緩めた。 そうだよ、オレには頼もしいナイト様が大勢ついてんだから。自分にもそう心の中で、言い聞かせていると… 「ん…?」 森の茂みの中、何かと目が合ったような気がして。なんだろうと、パチパチ瞬きをする。 そのはオレに気付かれた途端、慌てたように奥へと隠れてしまったみたいだけど…。 「…セツ、」 ルーも既に気配を察知していたのか、オレを庇うよう立ち上がり。そちらに意識を保ちながらも、目配せだけでジーナに向け合図を出す。 応えてジーナは音も無く立ち上がり、目にも留まらぬ速さで駆け出すと…あっという間に茂みの中へと、消えて行ってしまった。

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