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「逃がすかよ!」 「うわあっ…!?」 ジーナの動きに反応すら出来なかったは、あっさりと捕らえられて。 ズルズルと、茂みの中から引き摺り出される。 「え────…子ど、も?」 だよね…? ずっと気を張ってたから、一瞬魔物かなんかだと思い…内心焦ったんだけど。 その正体は、どう見ても人間の子ども…で。 まだあどけなさのある、小さな少年だったんだ、が… 「んだコイツ、なんでこんなところに…」 「いったぁ…はっ、はなしてよ~!」 ジーナに首根っこを掴まれジタバタ騒ぎ始める少年に、皆の視線が集まって。 思わずルーと顔を見合せる。 改めて見直しても、ホントごく普通の子どもみたいだし。害もなさそうだったから、大丈夫かな~と胸を撫で下ろしてたんだけど。 「あ…」 少年をじっと見つめていたルーファスが、何かに気付いたよう声を漏らして。次にはスタスタと、少年の元まで歩み寄る。と… 「なんでこんなとこに、ガキがいるんだよ?」 ジーナが不思議そうに首をかしげると。 少年はジーナを睨みながらも、素直に答える。 「たまたま森で野草とか、食べ物を探しててたんだっ…」 そこで目の前にやってきたルーファスを、少年はじっと見上げる。 「そしたら、さまが…」 「ティコ…」 ルーファスにと呼ばれた少年は。 聞けば城下からは少し離れた郊外にある、孤児院で暮らしている子どもだそうで。 守護騎士になる以前から、ルーファスが人知れず孤児院の子ども達と、交流を持っていたらしいんだけれど。 …んでもって、さっき少年が話してた通り。 山菜採りをしていたらところで、視察に向かう騎士団と出会し。気になって追っかけてたら、その中から見知った騎士…ルーファスの姿を見つけちゃったものだから。 こっそり様子を伺ってたんだと。 少年はバツが悪そうにしながら、打ち明けた。 「ルーファスさまが守護騎士になったから。孤児院にも来れなくなっちゃったって聞いて…。そしたらうわさの神子さままでいたから…」 好奇心に駆られた少年は…いけないと知りつつも、思わずついて来てしまったのだという。 こんな小さな子どもなのに… 魔物のいる森に入ってこれるなんて逞しい限りだ。 当初の目的は、山菜やキノコ狩りだったらしいけどね。いくらなんでも、ひとりで来て良いような場所じゃないはず。 城下から近いと言っても、それなりに距離はあるし。危険な場所なんだからね…。

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