107 / 423
⑩
「ごめんなさい…」
自身を無理やり捕まえたジーナには、プイッと反抗的にそっぽを向いちゃってたけど。
それでもルーファスに対しては、素直に頭を下げるティコ。ルーを追っかけ、こんな所まで来たって話だから…相当懐いてたんだろうなぁ。
子どもにだって絶対好かれそうだし。ルーが子どもと無邪気に戯れてるのを、想像しただけで…なんだか胸がほっこりしちゃうよね。
「ひとりで帰すのは危険だから、送ってやりたいところだが…」
「だなぁ…オレ達守護騎士が、セツから離れる訳にはいかねぇかんなぁ~。」
想定外のことに…ルーとジーナがオレを見ては、頭を抱える。
このまま、こんなに小さな少年を放っておくのも忍びないし。かといってオレ達は今から聖域に行かなきゃなんないから、一緒にもいられないし…。
「ならば騎士団に護衛をお願いしては、如何ですか?」
ヴィンからそう提案され、その手があるじゃん~とオレは感嘆の声を上げる。
「そうだな、此処も安全とは言えないし。早急に孤児院へと帰らせた方が良いだろう。」
ルーもひと安心だと納得して、ティコの頭をふわりと撫でる。
「じゃあオレが頼んで来るよ!オリバーさんなら、きっと了承してくれるだろうし!」
「えっ…オリバー団長に────いやセツ、それなら私がっ…」
善は急げとばかりにオレは。何か言い掛けたルーに気付きもせず、ダッシュでオリバーさんの元へと駆け出して。
後ろから「ボクも行く~」と、ロロののんびりした声がついて来る。
そうしてオレがオリバーさんへ、ティコのことをお願いしている間…
「行っちゃったねぇ~、セツには全く自覚がないからねぇ。」
強力なライバルがどんどん増えちゃうね~と。
アシュがぽんっ…と、ルーの肩を叩く。
「私は、別に…」
言われてルーはオリバー隊長と話すオレを遠巻きに見やり、言葉を濁して。
「ならば貴方は手を引くと言うことで、宜しいですね?」
「なっ…ヴィン、それはどういう…」
「え、マジ?ルーが抜けるなら、オレも本気出そっかな~…」
「ジーナ…お前まで何を────」
ルーファスとアシュレイ、それにヴィンセントとジーナの4人。彼らがそんな、意味深な会話をしているだなんて。
「あっ、またセツがオリバー隊長と手ぇ繋いでやがる~!」
「せ、セツ…!?」
「ふはっ…セツが相手では、前途多難だねぇ~。」
そんなことなど知る由もなく…。
彼らは皆、アシュの言葉に同感だと云わんばかりに。
オレを見ては、深い溜め息を漏らすのであった。
ともだちにシェアしよう!