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⑪
「ティコ、騎士の言うことを聞いて…くれぐれも気を付けるのだぞ?」
「はいっ、ルーさま!」
同行してくれることになった騎士にティコを託し、ルーファスが念を押すよう目線を合わせて少年へと言い聞かせると。
「では早速、孤児院まで送り届けて参ります。」
「すまないが、よろしく頼む。」
年若い騎士さんが、丁寧にオレとルーへ一礼をし。
オレも習って「お願いします」と伝え、頭を下げた。
「神子さまもルーさまといっしょに、孤児院へあそびに来てね~!」
こんな状況でも子どもは無邪気なもので。
ティコはオレを振り返り、笑顔いっぱいで手を振ってくる。
別れ際、ティコに散々せがまれたからね~。
好奇心旺盛な…でもそれは裏など一切無く、純粋な目で神子のオレを見てくれてるって判るから。
こういう可愛いのばっかだったら、大歓迎なのになぁ…。
さっきまでは、あんなにルーファスを慕ってたのに。最後は何故だかオレにばっか、懐いてしまったもんだから…。
ルーはなんだか複雑そうな顔をしちゃってさ。
アシュに至っては「セツはホント罪な男だねぇ~」と、意味不明なことを言われてはニヤニヤされちゃってた。
「さて、そろそろ参りましょうか。」
精鋭部隊の指揮は、特級騎士団第一本隊の団長であるオリバーさんが務めるらしく。
ちなみに、これもジーナから教えてもらったんだけど。神子のために作られた特級騎士団は、第一から第五までの団で構成されてるそうで。
オリバーさんが団長を務める第一本隊は、攻撃特化の部隊。ルーとヴィンが所属していた第二支隊は、それに次ぐ準攻撃部隊。ロロがいた第三魔導隊は、魔法特化型で…第四遊撃隊は主に偵察や隠密、特攻を得意とする部隊でジーナが所属してた部隊だ。
そしてアシュがいた第五防衛隊は、団の中でも盾役を担う防御特化型なので…それぞれ別の個性を持った構成になるんだと。
中でも第一といえば全騎士団でも花形的な存在らしくって…。その団長に選ばれるだけでも、凄いことなんだって。ジーナは自分のことを自慢するみたく、それは熱く暑く…語ってくれたのだった。
…とまあ、かなり脱線しちゃったけども。
オリバーさん達騎士団が、オレとルー達守護騎士を挟む形で小さく陣形を組み、森の入り口にて集う。
「森歩きに慣れぬセツ殿に合わせ、慎重に進みましょう。」
神域に続く森の中は、最低限の手入れしかされておらず。それは侵入者等への対策として、敢えて手付かずにしてるんだそう。
神子屋敷の林はちゃんと整備されてるから、まだマシな方で。入り口から見た森の奥は、鬱蒼と生い茂る深緑が視界を遮るよう犇 めき合っいていた。
自然の脅威とは切り離された、都会育ちのオレなんて…きっと足手纏いなんだろうけれど。
気を遣ってくれるみんなの、迷惑にはならないようにしなきゃと。オレは密かに意気込んだ。
「私共が先陣を行きますので。何かありましたら、遠慮なく申し付け下さい。」
先頭に立つオリバーさんが、オレに声を掛けてきて。
「セツ殿、どうか無理をなさらぬように。」
アリシア様も、気遣ってくれるから。
オレは応えてハイと、強く頷き返した。
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