109 / 423
⑫
「では────」
参りましょうと。オリバーさんが騎士達に合図をし、森の中へと足を一歩踏み入れる。
しかし…
「ッ………!!」
森の中に入ろうとした瞬間、ゾワリと背中に悪寒が走り。オレは思わず足を止める。
なんだろう、スゴく嫌な感じがする…
例えるなら…何か悪意のあるモノが、無理やりにこっち側へと入ってくるような…若しくはオレ自身がそちら側に、無理やり捩じ込まれたかのような…
上手く説明出来なくて、もどかしいけど。
とにかく、オレの中でソレが危険なモノなんだと…けたたましい警笛を鳴らした。
「セ、ツ…?」
いち早くオレの異変に気付いたルーが、声を掛けようとして。コイツもまた、ソレの気配を感じ取ったのか…弾かれたよう背後を振り返る。
ジーナ達や、他の騎士達も同様に反応を示して。
各々が剣の柄に手を掛けた。
「なんだ…」
オリバーさんもオレを庇うよう剣を構え、辺りを伺う。
女王様の周りにも、近衛騎士達が素早く陣を組み。緊迫した空気がその場にいる全員へと、瞬く間に広まった。
「ティコ…」
皆が見つめる方向…今しがた孤児院へと戻る少年を見送った先から、悲鳴のような声が聞こえて。ルーが咄嗟に、名前を口にする。
まさかティコの身に何かあったんじゃ───…
嫌な予感がしたオレは、声のした方角をじっと見据え。目を凝らすのだけど…
「ひっ…ぁ…助けてッ…!!」
「ティコ…!!」
爆発音と共に、ティコが叫びながら走ってきて。
「ぐあッ…!」
ほぼ同時に、先程ティコに同行してくれた騎士さんが…何かの衝撃を受け吹き飛ばされてくる。
彼はそのままの勢いで幹へと激突すると…その場に力無く崩れ落ちてしまった。
ティコもその時の爆風に巻き込まれ、鑪 を踏んで倒れそうになる。
「なっ…」
突然のことに、オレは動くことすら叶わず。
それでも本能で、得体の知れない何かを感じとっているのか…全身の震えが止まらなくなる。
「セツ、私の傍を離れるなよ…」
視線はそこから外さぬまま、ルーファスがオレの前に立ち。ジーナも彼の横で素早く拳を構える。
オリバーさんもそれへと続き…
オレの背後にはロロとアシュとヴィンが囲む形で、戦闘態勢を取った。
「何者です!姿を現しなさい!」
自らも剣を抜き、“何か”に向けてアリシア様が一喝すれば。ソレはまるで応えるかのように…
ゆっくりと、その姿を現した。
ともだちにシェアしよう!