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「では────」 参りましょうと。オリバーさんが騎士達に合図をし、森の中へと足を一歩踏み入れる。 しかし… 「ッ………!!」 森の中に入ろうとした瞬間、ゾワリと背中に悪寒が走り。オレは思わず足を止める。 なんだろう、スゴく嫌な感じがする… 例えるなら…何か悪意のあるモノが、無理やりにへと入ってくるような…若しくはオレ自身がに、無理やり捩じ込まれたかのような… 上手く説明出来なくて、もどかしいけど。 とにかく、オレの中でが危険なモノなんだと…けたたましい警笛を鳴らした。 「セ、ツ…?」 いち早くオレの異変に気付いたルーが、声を掛けようとして。コイツもまた、の気配を感じ取ったのか…弾かれたよう背後を振り返る。 ジーナ達や、他の騎士達も同様に反応を示して。 各々が剣の柄に手を掛けた。 「なんだ…」 オリバーさんもオレを庇うよう剣を構え、辺りを伺う。 女王様の周りにも、近衛騎士達が素早く陣を組み。緊迫した空気がその場にいる全員へと、瞬く間に広まった。 「ティコ…」 皆が見つめる方向…今しがた孤児院へと戻る少年を見送った先から、悲鳴のような声が聞こえて。ルーが咄嗟に、名前を口にする。 まさかティコの身に何かあったんじゃ───… 嫌な予感がしたオレは、声のした方角をじっと見据え。目を凝らすのだけど… 「ひっ…ぁ…助けてッ…!!」 「ティコ…!!」 爆発音と共に、ティコが叫びながら走ってきて。 「ぐあッ…!」 ほぼ同時に、先程ティコに同行してくれた騎士さんが…何かの衝撃を受け吹き飛ばされてくる。 彼はそのままの勢いで幹へと激突すると…その場に力無く崩れ落ちてしまった。 ティコもその時の爆風に巻き込まれ、(たたら)を踏んで倒れそうになる。 「なっ…」 突然のことに、オレは動くことすら叶わず。 それでも本能で、得体の知れない何かを感じとっているのか…全身の震えが止まらなくなる。 「セツ、私の傍を離れるなよ…」 視線はそこから外さぬまま、ルーファスがオレの前に立ち。ジーナも彼の横で素早く拳を構える。 オリバーさんもそれへと続き… オレの背後にはロロとアシュとヴィンが囲む形で、戦闘態勢を取った。 「何者です!姿を現しなさい!」 自らも剣を抜き、“何か”に向けてアリシア様が一喝すれば。はまるで応えるかのように… ゆっくりと、その姿を現した。

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