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「お前、強そうだな。」 「そう思うならば、己で確かめてみるがいい。」 不適に笑い対峙するラルゴとオリバーさん。 スピードタイプで軽量級のジーナとは違い、オリバーさんはルーファスよりも更に長身でガタイも良く…重そうな大剣を易々と扱うような、まさにパワータイプって感じの騎士なのだけど…。 更に上をいく巨漢のラルゴに並ぶと、どうしても小さく見えてしまう。 それでも先程の攻撃を、難なく弾き返したのだから。力比べではきっと…負けてないはずだ。 現にラルゴはオリバーさんを見下ろしながら、その目に苛立ちのようなものを滲ませている。 「待ちやがれ…!」 「しつこいですねぇ。」 オリバーさんの援護を受け、ムーバの後を追うジーナ。 彼らに感化された騎士達も士気を上げ、応戦に加わわれば。従える魔物の数の利はあれど、ムーバの思惑どおりには至らず…現状では、かなり足止めを食らっていた。 冷静沈着そうに見えた魔族も、これには歯痒げに顔を歪ませている。 「そんな鈍足で、俺を撒けると思うなよ!」 さすがは格闘のスペシャリストにして、切り込み隊長。軽快な身のこなしで、あっさりと距離を縮めていく。 このままムーバまであと少しってところまで、来てたんだけど──── 「子どもと遊んでる暇は無いのでね…」 「くッ…!」 ムーバが歩を緩めた瞬間、新たに召喚魔法を発動させて。瞬く間に形成された魔物は、すぐさまジーナへと襲い掛かる。 その奇襲は、ギリギリ回避するものの…その隙にムーバとの距離は振り出しに戻されてしまうから…。 ジーナは悔しげに舌を打ち、奥歯を噛み締めた。 「ジーナ、援護するよ!」 「ロロ!」 休む間も与えられず、3体の魔物をひとりでいなしながら、ムーバをどうにか追撃しようと奔走するジーナ。 そこにロロが、メイスを構え加勢に入る。 「アシュがセツの壁になるから!」 「りょーかい!」 年少組は息ピッタリに目配せし、魔物を迎え撃つ。 ジーナが特攻して敵を撹乱し隙を作り、ロロが後方から魔法で援護射撃する。 その見事な連携プレイは、それはもう鮮やかで。 まさに彼らならでは…といった戦法だった。 ふたりが魔物と戦っている隙に、ムーバは着実にオレとの距離を詰めて来る。 森の入り口は今や混戦状態で。 魔族2人に、召喚された闇の眷属を加えた戦況は、一触即発。予想外に始まった攻防は、どちらが優位とも判断付かない展開を迎えていた。 「魔族をセツ殿に近付けてはなりません!皆で死守するのです!」 自らも剣を握るアリシア様が檄を飛ばし、騎士達に命じるものの… 「ぐぁッ…!」 「怯むな、魔物は連携して各個撃破せよ!」 狭い空間で、巨大な魔物を何体も相手にしなくてはならず。いくら特級騎士団の精鋭といえど、人数も限られているため、苦戦を強いられる。 それでも彼らは勇敢に戦い、確実に魔物を撃破しているのだから。さすがはフェレスティナが誇る、最強の騎士団だなと思った。 「ルー…」 そんな中でもオレは相変わらず、ルーの背中に隠れてるしかなくて。震える足でこの場に立ってるのがやっと。 戦争なんて知識でしか知らないし。 人を殴ったことだって、幼少時代の他愛ない喧嘩以外は、手を出したこともなかった。 だから目の前の生々しい現実が、怖くて怖くて… 本当は今すぐ逃げてしまいたいくらいだったけど。それではダメだと自分に言い聞かせて。オレはなけなしの理性をなんとか保とうと、必死に踏ん張ってみせた。 「大丈夫だ、セツ。」 こうして立っていられるのは、きっとルーファスが傍にいるから。 いつの間にか、ルーの服を掴んでたオレに。 穏やかな声音が降りてきて、僅かに振り返るルーを見上げ、オレはなんとか頷いてみせる。 そうだ…みんなオレを守ろうって、必死に頑張ってんだから。神子のオレがしっかりしなきゃだよな…。

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