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「セツ……」 「な……!?」 無我夢中で願った瞬間…オレの内側から何かが弾け出し。光を纒ったそこから、勢い良く溢れ出す。 それは一気に膨らみ、輝きを増幅させ。 オレの身体から天に向け…高く高く立ち昇っていった。 目映い光の柱を目に。その場にいた全てのものが動きを止め、此方を振り返る。 「セツ殿…」 「どうなってんだ、アレ…」 鍔迫り合いの真っ只中だったオリバーさんとラルゴも、これには戦いを中断し。互いに距離を取り…此方へと意識を向ける。 ジーナ達も、ムーバと戦っていたアシュも。 皆がその光景に魅せられ…釘付けとなっていた。 (なん、だ…コレ…) 光の中心にいるオレですら、この状況に困惑しちゃってて。 けど、光の中はとても温かく。それが悪いものじゃないって…なんとなくだけど解るから。不思議と恐怖心は和らいでいた。 それに… 「…ん…ぅ…ッ…」 「ッ…ティコ…!!」 瀕死だったはずのティコが、ちゃんと目を覚ましたから。 それだけでオレの胸はいっぱいになり…堪らず少年の身体を、ぎゅっと抱き締めた。 「セツ…」 眩しげにオレを見やるルーが、静かに名を呼ぶ。 見上げて目が合ったから。 もう大丈夫だよって、涙ながらにも頷いたら… ルーはふわりと笑って返してくれた。 「すごい…」 騎士も魔族の2人も、人のような理性や感情を持たないはずの魔物でさえも。 オレから放たれる光に一瞬、心奪われ。戦意喪失、戦っていたことなど忘れ、しばらくは茫然としていたのだけど… 『グアアア…!!』 突如、魔物達が苦しげにのたうち始め…それは連鎖するよう全ての魔物へと広がり。次々と、悲鳴染みた雄叫びを上げ出して。 「チッ…!」 本来は主人であるはずのムーバとラルゴにも見境なく、襲い掛かっていた。 2人の魔族からは、魔物ほどの変化は見られなかったが… 「術が────……これは、神子の力か…」 「おいムーバ、どうなってんだ…!」 何か思案しながら顔をしかめるムーバに、ラルゴも余裕なく叫んでいて。そうこうする内に魔物達は更に理性を失い、暴れ出すから。 「魔物が、消えてくぞ…!」 そうして誰かがが叫んだ通り、次々と魔物達が霧散して消え去り…。その光景を前に、思わず歓声が沸き上がると。 「奇跡、ですわ…」 アリシア様も額に汗を流しながら。安堵したよう、満面の笑みを溢していた。 「…ラルゴ、引きますよ。」 「チッ…指図してんじゃねぇよ…」 魔物はいなくなり、残された魔族は戦況を不利とみてか…呆気なく退却していき。 その後を、数名の騎士が素早く追走に出る。 「深追いはするな!危険と判断したら、すぐに帰還せよ!」 オリバーさんが、すかさず指示を飛ばし。 残った者は余韻に浸る間もなく、現状把握と負傷者の手当てに奔走し始めた。 (は…ぁ…) 安心したのか…力が抜けた途端、光の柱がゆっくりと消えていき。 (あ、れ…?) 同時に視界が、くらりと揺れる。 「セツっ…!!」 抱いていたティコを支える余裕すらなくなり、オレはそのまま背中から崩れ落ちてしまい… 倒れそうになるのを、大きな腕が受け止めてくれた。 「る、ぅ……」 「しっかりするんだ、セツ!!」 オレとティコを支えながら、ルーが叫んでるけど。 もう…耳には、何も届かなくて。 『セツ…!!!』 オレの元へと、みんなが駆け寄ってくる気配を最後に。その意識はぷっつりと…遮断されてしまったんだ。

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