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ep.11 急接近フラグ?①

(ん…) ぼんやりした世界…これはきっと夢。 今までに体験した中で、印象的だった記憶が。 途切れ途切れに、再生されていく。 さながら走馬灯のようだったけれど…そのどれもが現世のものではなくて。 ここ最近の、何より鮮明でいて温かな…とても幸せな、思い出ばかりだった。 ルーファスと出会い、この世界の神子と呼ばれ…みんなと一緒に過ごした日々。 時には危険な目にも会ったけど。 最後には必ず、アイツが助けてくれたっけ…。 舞踏会をドタキャンしたのは、さすがに反省したなぁ…ルーとダンス出来たのは、ぶっちゃけ嬉しかったけどさ。 この頃にはもう、相当アイツに惚れちゃってたもんね…オレ。 それから、神子の結界がある神淵の森へ行くことになり。…そうだ、突然魔族が襲ってきて、みんな傷付いて… オレは何も、出来なく…て─────ああ… (ティコ…ティコは…) どうなった? 魔物に襲われた少年は…オレの腕の中で、血塗れになって。苦しそうに泣いてゴメンねっ…て。 それから─────… 「ッ……ああ…!」 「セツ…!!」 夢の中で最も新しい記憶が甦り、オレは恐怖に駆られ。 でも曖昧にしか思い出せないから… 息苦しさを覚え、オレは夢の中で必死に(もが)いた。 「セツ、セツ…!」 「ぁ…るっ…」 そしたら何度も何度も、名を呼ばれて。 声に導かれるよう、引き戻されてくオレは…そこで漸く夢から解放される。 ハッとして目を開き、ぼやけた視界で辺りを見渡すと… 「セツっ…良かった…」 そこは見知ったオレの部屋。 ベッドに横たわる傍らでは、ルーファスの切なげに歪む顔があって。 あれ、どうして… 「る、ふぁすっ…」 目覚めて間もない虚ろな思考を(もた)げ、オレはのろりと起き上がる。 記憶が曖昧なせいか、一気に不安が押し寄せてしまい…。生々しい感覚も加わり、オレの身体は途端にガタガタと震え出した。 「ルー、みんなはっ…ティコは…!!」 「セツ、落ち着くんだ…」 さっきまで神淵(しんふち)の森にいたハズだ。そこで魔族が、魔物が攻めてきて、みんな戦ってて──── あれからどうなったのか、なんでオレは部屋で寝てるのか…。ワケが解らず取り乱し、ルーへとしがみつく。 半狂乱で泣き出すオレに、ルーは困惑してたけど。わあわあと泣きじゃくるオレを、落ち着かせるため。ぎゅっと抱き締めてくれた。 あやすみたく背中を擦られて、それに合わせ深呼吸をすれば。少しだけ、オレは冷静さを取り戻す。

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