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②
「ルー、ティコは…」
ティコは魔物にやられて死にそうだったんだ。
あの状況じゃどうしようも────最悪の結末を想像してしたオレは、またグシャグシャと泣き出してしまい。
そんなオレに向けルーは、やんわりとした声音で…徐に語り掛けてきた。
「セツ。ティコなら大丈夫だから。」
安心しろと、ルーの言葉を頭に反芻させる。
それから順を追い…オレが神子の治癒魔法を発動させたことや、その後すぐに気を失ったことなんかを聞かされて。
思えばそんなことあったな…と、落ち着いて思考を巡らせていけば。少しずつ、当時の記憶が蘇った。
「セツのおかげで、ティコも一命を取り留めたんだ。」
奇襲だったにも関わらず、負傷者は出たものの…幸い死者はゼロ。ティコの護衛をしてくれてた騎士さんも、重傷だったらしいけど助かったんだそう。
さすがに一度は瀕死状態にまで陥っていたティコは、大事を取ってこの屋敷で預かることとなり…今は別室で療養中なんだって。
そうして丸3日間オレはずっと眠り続け…ようやく目覚めて、今に至るというわけだけど。
何気にその間、ルーファスが付きっきりで看病してくれたらしい。えへへ…
「そ、か…良かったぁ~──…」
今度は気が緩んで涙が止まらなくなり。オロオロするルーを前にしてオレは、子どもみたく泣き出してしまう。
二十歳 を越えた大の男が、情けないにも程があるけど。あんな怖い思いをしたのは初めてだったし。
あの時はティコが死んじゃうかもって、もう必死だったからさっ…
「セツ…」
「ゴメッ…でも、こわかっ…たん、だッ…あん、な…」
生ぬるい世界で、ぬくぬくと育ってきたオレにはあまりに衝撃的過ぎて。改めて現実の厳しさを、思い知らされる。
オレが今、どんな世界にいて。どんな立場に置かれているかを…
「セツ…」
どう答えて良いのか…迷うルーは黙ったまま、その胸にオレを強く抱 き、包み込む。
それはどんな言葉よりも優しくて。
気弱なオレの心を、穏やかに溶かしてくれた。
あったかくて、逞しくて。オレの大好きな人…
「う、うっ…」
「セツ…?…」
胸に擦り寄り泣いていれば、自然と落ち着いてきて。ルーがオレの顔を覗こうと、少しだけ離れようとするけれど…
「だめ、も…少し、だけ…」
離れないでって。じゃなきゃ不安になるからと。
我が儘に乗じ、その首へとしがみつく。
そのまま頬にすり寄れば…ルーはビクリとたじろいだけれど。それでもオレの肩をまた、抱き寄せてくれた。
ゴメン…ルーならオレを甘やかしてくれるって、こんなのズルイって解ってたけど。
今はなんだか無性に、触れて欲しかったんだ…。
「セツ…」
「ルー…」
今だけは大胆に。
恥じらいを捨て、愛しい人の身体に触れる。
最初はぎこちなかったルーファスも。
オレの不安げな心情を察してか、同じように身体をくっつけてきてくれて。
探り探りのその行為は、あっさりと背徳に身を委ねていき…
オレの熱を、更に昂らせた。
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