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③
「っ…ぁ……」
頬が触れるだけのじゃれ合いだったものが…ルーの唇が緩やかに移動していき、オレの耳朶を掠める。その熱い吐息に思わずビクンと肩が揺れてしまい。堪らずルーへとしがみついた。
そのまま唇は、こめかみや涙に濡れる目尻、頬に触れるだけのキスを順に落としていって…。
ほんの少しの触れ合いなのに。
それだけでもオレの身体は、大袈裟なくらい跳ね上がった。
「ぁ…る、ぅ…」
「セ、ツっ…」
漏れそうな声を、秘めたる想いごと飲み込み耐えていると。不意打ちにも、ルーファスの瞳に捕まってしまい…。
色香を纏う翡翠に射抜かれ…瞬く間も無く、釘付けにされる。
(あ…やば、い…)
キスして欲しい──────なんて。
邪な考えに支配され、物欲しげに薄く唇を開くと。
(…このままじゃ、)
もう抑えが効かない、彼が欲しくて堪らない。
そんなことを思ってたら、ルーの顔もゆっくり近付いてきて────
『神子さま─────!!』
「ッ…───!!!」
その距離僅か数センチのところで、扉が勢い良く開け放たれ。ドタバタと…部屋に飛び込んで来た人物により、現実へと引き戻され。
秒で熱を冷まされたオレは。慌ててルーファスの胸を押しやるのだった。
「あ、ティコっ…!」
「神子さま!」
嵐のようにやって来たのは、療養中と聞いていたティコで。オレを見るなり、満面の笑顔で駆け寄ったかと思えば…勢い良く抱き付いて来る。
「良かったぁ~、目が覚めたんだね!」
「ティコも、無事で良かった…」
グリグリと頭を擦り付けてくる少年を、ぎゅっと抱き締める。
死にかけたとは思えないぐらい、元気そうだったけど。その小さな身体には、まだ怪我が残っているのか…あちこちに包帯が巻かれていた。
「神子さまが治してくれたから、ぼく平気だったんだよ!」
怪我した腕で必死に抱き返してくるティコに、また涙が込み上げてくる。
あの時はホント死んじゃったんだと思ってたから。…神子なのに何も出来なくて、歯痒い思いもしたけど。この子を救うことが出来たのなら、何よりだ。
ホント良かった…
「神子さま…?」
恐怖の瞬間を思い出し。感極まってしまったオレは、涙を溢してしまい…。そんなオレにティコは戸惑い、思わずルーファスの顔を見上げる。
するとルーは困ったよう苦笑しながらも、ぽん…と少年の肩を優しく叩いて。
ティコはもう一度オレへと向き直ると、おずおずと濡れる頬に手を伸ばしてきた。
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