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④
「神子さま…」
「ごめんなっ、ティコが無事で嬉しくってさ…」
幼い少年を前に、それでも涙は止まんなくて。
無理矢理笑ってはみせるんだけど。こんなグシャグシャな顔じゃあ、説得力もありゃしないよね…。
「うん、もうぼく大丈夫だから。」
泣かないでと、年端もいかぬティコはオレをよしよしと慰めてくれる。
そんなことされると余計泣けちゃうから。
更に思い悩んだ末の少年は、なんとも大胆な行動に起こし────
「……!」
「神子さまは、笑ってる方がステキだよ?」
ね?…って。
幼いティコは目尻に二度、ちゅっちゅと可愛らしいキスを落としてくる。
これにはオレもビックリしちゃって。思わず目を丸くするのだけど…
「やっぱりここに来ていたんだねぇ、ティコ。」
探したよ~と、間延びした声で部屋へと入って来たのは…アシュレイであり。寝てたはずのティコが脱走しちゃったもんだから、と…あちこち探してたみたいだ。
アシュが大袈裟な溜め息を吐きながら、スタスタと此方へやって来ると。次にはオレへと抱き付いてたティコを、容赦なく引っ剥がしてしまった。
勿論、ティコはヤダヤダと抵抗するのだけど…。
「ほらほら、セツはまだ目覚めたばかりだろう?」
休ませてあげなきゃね~と、アシュが優しく諭すと。ティコは名残惜しそうにオレを見やって。
「神子さま…元気になったら、孤児院に来てくれるよね?」
「うん、約束したからね。」
オレの独断では行けないから、許可は取らなきゃだろうけど。そこは絶対なんとかするからさ。
答えればティコは嬉しそうにはにかんで、
「約束だよ~!」
バイバ~イと元気に手を振り、部屋を後にした。苦笑いを浮かべながら少年に続くアシュは、扉を締める瞬間、オレ…いやルーを振り返り、
「ふふ…お邪魔したね?」
悪戯なウインクひとつ、ごゆっくり~と意味深な台詞を残し…去っていった。
『………………』
残されたオレ達は、無意識に顔を見合せる。
ティコの来訪で有耶無耶になってたけど…オレとルーは、さっきまで────
そのことを思い出せば。オレは真っ赤になり俯いてしまう。
ルーもさすがに恥ずかしいのか…同じく赤面しながら、口元を押さえ出して。ぎこちなく明後日の方を見上げては、オレから顔を背けていた。
「っ…ティコのやつ、可愛い顔して大胆だったなぁ~!」
振り払うよう…アハハと笑い飛ばし、オレは話題を投げ掛ける。
しかし…
「まさかチューされるとは思わなかっ…た、し…?」
自ら墓穴を掘り、地雷を踏んずける始末。
対するルーは怒ったような拗ねてるかのような、すごく微妙な表情を浮かべちゃうもんだから。
何ともいえない空気に、耐えきれなくなるオレは。更なる爆弾を投下してしまうのだが…
「や、ルーだって…さっきしてたじゃんかっ…」
テンパった挙げ句、ワケの解らないことを口走るオレは。気付いたところで後の祭り。
面食らったルーは、あからさまに狼狽え始める。
「あれは違っ…や、そうなのだがっ…」
最初にすり寄ったのはオレだけどさ…まさかルーから、デコチューとか色々されるとは…思わなかったし!
最後のは、未遂に終わったけど…
もしあのまま、ティコが来なかったら。
どう、なってたんだろ…。
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