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「私は……」  ティコからキスされたことをネタに出した途端、ちょっと不機嫌っぽくなってたルーファス。 かと言って、自分がしでかした所業についてオレからツッコまれたら言葉を濁しちゃうし…。 ルーはなんで、あんな風にオレへ触れたりキス…したりするんだろ?唇ではないにしろ、コイツが優しいってだけで男相手にキスとか、さ… 簡単に、出来ちゃうもんなのかな… 「なんだよ……」 ティコにヤキモチでも妬いてんのかって、冗談ぽくわざと茶化せば。ルーは目を丸くしてオレを見る。 すると… 「私としたことが、大人げなかったな…」 きっと違うって、否定してくると思ってたのに。 あっさり肯定され顔が熱くなる。 「子ども相手にと、解ってはいたんだが…」 お前の事になると自制が効かない───…だなどと。 答えるルーに、オレは思わず勘違いしそうになる。 「その、すまなかった。いきなりあんな事をして…」 潔く謝られ、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。 なんで、オレ…嬉しかったのに。 そんな風に謝られたら、どうすりゃいいんだよ…。 「別に、謝んなくても…」 「セツ…?」 ルーはただ、オレを慰めようとして。それこそティコと同じように…苦肉の策で、ああいうコトをしてくれたのかもしれない。 …しれないけどさ。 オレはもうお前が好きで堪んないわけだし。 お前の何気ない行動ひとつで、一喜一憂させられちゃうんだからな? ホントは今すぐにでも、好きだって言いたい。キスだってちゃんとして欲しい… でも、もしお前の優しさが、“神子”という肩書きだけに向けられているものだとしたら。ただただ純粋な忠誠心からくるのものだと、したら…。 そんなことがぐるぐる頭を過るから。 どうせオレは男なんだって、だったら今の主従な関係のままのが、マシだろって… たった一言であっても。この想いは… 言葉に紡ぐことなんて、簡単には出来ないなんだ。 「オレは、お前に触れられるのっ…ヤじゃないし…」 それでもオレはズルイから。 本音は見せないクセに、独占欲だけをちらつかせる。 ルーに神子扱いされるのは嫌だけど… それでもお前が、傍にいてくれるなら…ってさ。 ホント、醜いよなぁ… 「そう、なのか…?」 おずおずと聞き返すルーに、照れながらもこくりと頷く。 「だって、お前に触られるの気持ち良いし。なんか安心するっていうかさ…。」 好きな人に触れられて、嫌がるヤツなんていないだろ?…そんなこと絶対言えないけど。

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