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⑥
「そうか……」
するとルーファスは何を思ったのか、じっとオレを見つめてきて。無意識なのかなんなのか、まるで愛おしむかのような…なんとも言えない表情を、見せつけられるから。
内心気が気じゃないオレ。
更にルーの行動はエスカレートして…
徐に、オレの頬へと手を伸ばしてきやがった。
「ならばもう一度、触れても良いか…?」
「え…?」
ダメか?…って、いやいやもう触れてますけど?…と。芸人バリにツッコんでやりたいけど。
そんな綺麗な目で首を傾げながら、おねだりされたらさ~。オレ単純だから、すぐ勘違いしちゃうんだってば…
…もう、バカ。
「…い、よ…」
勿論、喜んで…とはさすがに言えなくて。素っ気なく応えれば、ルーはそれでも嬉々として目を細めながら、オレの頬を指でなぞってくる。
そのまま唇にも触れてくるものから…。
あからさまに意識するオレは、バカみたいに反応して…堪らず目を瞑った。
視覚が消えた分、余計に鮮明になってしまう指の感触。
オレに下心がある所為なのかな…妙に擽ったいソレは、なけなしの理性を容易く掻き乱してく。
ルーはただ触れてるだけなのに。その接触は、なんとも言えない甘い疼きを、与えてくるから…
「セツ…」
「……ッ…」
ルーの声で名を囁かれ、クラクラする思考。
ちょっとしたスキンシップが、どうしてこんなにも気持ち良いんだろう。
その手は無慈悲にも、唇から目元…さらりと髪を絡めとり。耳朶へと滑り落ちた瞬間、ゾクリとそこに際どい電流を走らせた。
「ンッ…あッ…!」
耐えきれず漏れ出た声の、なんと甘いことか。
自分でも驚くような、まるで喘いでるみたいな声を…発してしまい。
オレは思わず口を押さえ、ルーを見上げる。
「セツ…今の、は…」
触ってた本人もビックリしたんだろう。ピシリと固まり、茫然とオレを見下ろしてきて。
なんだか答えを期待するかのような、ルーの眼差しに。オレの忍耐力はとうとう、限界を超えてしまったようだ。
「ちがっ、これは…!」
ヤバいヤバいどうしよう…
頭ん中沸騰してワケわかんない。
なんか言い訳しようにも、意味不明なことばっか口走っちゃって。実のある言葉はなんにも出てこないし。
しかも…
「今のはルーが…ルーが、変な触り方するからっ…!」
「なっ…!」
挙げ句の果てに、全ての責任をルーに丸投げする始末。こうなってくるともう、後には引けないから…
「やっぱダメ!ルーの触り方…なんかヤラシーんだもん!」
「や、やら…」
オレの暴言を受け、オロオロするルーファスに。
「ルーのエッチ…!!!」
「ッ…!!」
オレはトドメの一撃をお見舞いして。
強制的にルーファスの背中を押しやり…部屋から追い出してしまった。
扉越し、困惑するルーの声が聞こえてくるけれど…
「セツ、違うんだっ…」
「ダメ!ルーはすぐセクハラするから…しばらく出入り禁止!」
だってこのままじゃ、オレの心臓もたないんだもん…。可哀想だけど、今は許して欲しい。
ルーの触り方がヤラシーのは、間違いじゃないし。これ以上は理性が保てないから…
オレは弁解し続けるルーを無視して。
現実逃避のため、無情と知りつつも扉へと鍵を掛けるのであった。
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