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「そうか……」 するとルーファスは何を思ったのか、じっとオレを見つめてきて。無意識なのかなんなのか、まるで愛おしむかのような…なんとも言えない表情を、見せつけられるから。 内心気が気じゃないオレ。 更にルーの行動はエスカレートして… 徐に、オレの頬へと手を伸ばしてきやがった。 「ならばもう一度、触れても良いか…?」 「え…?」 ダメか?…って、いやいやもう触れてますけど?…と。芸人バリにツッコんでやりたいけど。 そんな綺麗な目で首を傾げながら、おねだりされたらさ~。オレ単純だから、すぐ勘違いしちゃうんだってば… …もう、バカ。 「…い、よ…」 勿論、喜んで…とはさすがに言えなくて。素っ気なく応えれば、ルーはそれでも嬉々として目を細めながら、オレの頬を指でなぞってくる。 そのまま唇にも触れてくるものから…。 あからさまに意識するオレは、バカみたいに反応して…堪らず目を瞑った。 視覚が消えた分、余計に鮮明になってしまう指の感触。 オレに下心がある所為なのかな…妙に擽ったいソレは、なけなしの理性を容易く掻き乱してく。 ルーはただ触れてるだけなのに。その接触は、なんとも言えない甘い疼きを、与えてくるから… 「セツ…」 「……ッ…」 ルーの声で名を囁かれ、クラクラする思考。 ちょっとしたスキンシップが、どうしてこんなにも気持ち良いんだろう。 その手は無慈悲にも、唇から目元…さらりと髪を絡めとり。耳朶へと滑り落ちた瞬間、ゾクリとそこに際どい電流を走らせた。 「ンッ…あッ…!」 耐えきれず漏れ出た声の、なんと甘いことか。 自分でも驚くような、まるで喘いでるみたいな声を…発してしまい。 オレは思わず口を押さえ、ルーを見上げる。 「セツ…今の、は…」 触ってた本人もビックリしたんだろう。ピシリと固まり、茫然とオレを見下ろしてきて。 なんだか答えを期待するかのような、ルーの眼差しに。オレの忍耐力はとうとう、限界を超えてしまったようだ。 「ちがっ、これは…!」 ヤバいヤバいどうしよう… 頭ん中沸騰してワケわかんない。 なんか言い訳しようにも、意味不明なことばっか口走っちゃって。実のある言葉はなんにも出てこないし。 しかも… 「今のはルーが…ルーが、変な触り方するからっ…!」 「なっ…!」 挙げ句の果てに、全ての責任をルーに丸投げする始末。こうなってくるともう、後には引けないから… 「やっぱダメ!ルーの触り方…なんかヤラシーんだもん!」 「や、やら…」 オレの暴言を受け、オロオロするルーファスに。 「ルーのエッチ…!!!」 「ッ…!!」 オレはトドメの一撃をお見舞いして。 強制的にルーファスの背中を押しやり…部屋から追い出してしまった。 扉越し、困惑するルーの声が聞こえてくるけれど… 「セツ、違うんだっ…」 「ダメ!ルーはすぐセクハラするから…しばらく出入り禁止!」 だってこのままじゃ、オレの心臓もたないんだもん…。可哀想だけど、今は許して欲しい。 ルーの触り方がヤラシーのは、間違いじゃないし。これ以上は理性が保てないから… オレは弁解し続けるルーを無視して。 現実逃避のため、無情と知りつつも扉へと鍵を掛けるのであった。

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