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③
緩やかな高台にあるフェレスティナの宮殿と、町を囲む壁の外にも。田畑を囲む農家などの集落が、点々と続いていて。孤児院は更にその外れ、神淵の森に向かう途中に存在するという。
森には神子の結界があるので。定期的に監視するための駐屯地が、備えられているらしく。孤児院が、その近くの丘陵にあったものだから…その存在を気に掛けていたルーが、人知れず通うようになったんだそうな。
つい先日も通った街道を、ルーの馬に乗って進む。
もっと怖いかと思ったけど。ルーがオレのために制御してるからか、意外と快適で。
…といっても、違う意味では全然落ち着かなくて。
平気とは、言えなかったんだけどね…。
「わあ…あれ畑かな~?メチャクチャ広いんだな~…」
「ああ、こちらの道は田園地帯だからな。」
まだ青々と茂る稲穂のような作物を指して、ルーへと話しかける。
大きな街道の脇道に入ると、また違った風景が視界いっぱいに広がり。吹き抜ける風に外套のフードが煽られ…隠してた黒髪が露となれば、さらりとそれに靡いた。
「髪、伸びたな…」
オレの髪がルーの頬を掠め、擽ったそうに目を細める。
「ごめん邪魔だよね。そろそろ切らなきゃとは、思ってたんだけど。」
思えばルー達と出会って、2ヶ月くらいかな?
こっちの世界に来る前から、切ろう切ろうとは思ってたのだけど。
フラれてから今日まで、そりゃもう色々あったもんで…そんなの気にする暇もなかったんだよね。
とはいえ自分じゃ散髪出来ないし。
こういうことは、メイドさんとかに頼まないといけないんだろうけど。
そうしてルーに片手でしがみつきながら。どうしたもんかな~と、毛先を玩んでいると…
「切るのか…?」
「え?」
なんだか寂しそうにするルーファス。
オレはきょとんとしてしまい。
「別にまだ平気だけど、伸ばしたままなのも鬱陶しいかなぁって。…あ、ダメなのかな…?」
何か神子特有の規則でもあるのかなって、問いかけると。ルーはちらりとオレを見ながら、うむ…と考え込んじゃって。
しばらくすると、遠慮がちにポツリと答えた。
「いや、お前の黒髪は綺麗だから…切るには惜しいなと思って…。」
「…っ……!」
そう言って、口付けるみたく。オレの髪に擦り寄るから…ズルい。
…まあ、こっちの世界じゃ黒髪が存在しないから。珍しいってのも…あると思うんだけど。
(女の子みたいじゃんっ…髪、誉めるとか…)
ダメダメ!
ルーファスの無自覚タラシに、いちいち期待しちゃ…けど、心は正直に反応を示してる。
だから、
「ルーは、切って欲しくない…?」
前方に向く顔を盗み見て、ぽそりと問えば。
少しだけ、目があって。
「…出来れば、な。」
コイツには絶対、抗えるわけがないから。
「なら、も少し伸ばしてみようかな…。」
満更でもないオレは、すぐ絆されてしまうのだ。
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