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⑥
「立ち話もなんですから、どうぞ中へ。」
言われて孤児院の中へと案内される。
中も木造の赴き溢れる様相で。
入ってすぐの部屋は扉も無く、開放的な教室といった感じで、雑然と長机が並べられており。聞けばリドリーさんが奥さんと一緒に、勉強も教えているそう。
そういえばティコから、先生と呼ばれてたっけと思い出す。
他にも図書室や作業場、2階には子ども達の生活スペースなどがあって。オレ達は1階の食堂へと通された。
「すみません、皆さんをもてなせるような部屋が他にありませんで…」
「いえ、お構い無く…」
リドリーさんの奥さんからお茶を貰い。
一息ついてから、改めて皆が自己紹介をして。ティコの怪我について、かい摘まんでだけど説明する。
話し終えると、リドリーさんは奥さんと揃ってまた、深々と謝罪してきた。
「森には魔物もいますので、普段はひとりで行かないよう注意していたのですが…」
「ごめんなさい…」
しゅんとなるティコに、リドリーさんは優しく頭を撫でる。
「いえ、幼いお前達にも働かせてますから…」
採取も日々の食料やお金のため…孤児院を営むのも、簡単じゃないんだろう。
ひとりで勝手に神淵の森へ行ったことは叱るものの…リドリーさんは、なんだかとても複雑そうな表情を浮かべていた。
「とはいえ、神子様のお務めの邪魔をしてしまったのも事実。私が至らぬばかりに…」
ティコの保護者として申し訳ないと、何度も謝るリドリーさん。
孤児と言うからには、何かしらの理由があって。親を亡くしたり、捨てられたり…そうして家族と一緒に暮らせなくなった子達ばかり、なんだろう。
それを親身になり、血も繋がらない彼らは当たり前のように育てている。
オレの世界でも、度々そういった悲しいニュースが取り上げられていたけど。
可哀想にと同情するだけで、何処か非日常というか。結局は他人事って感じだったから…。
こうして実際、現実を目の当たりにすると…無性に切なくなる。
(でも、オレは…)
神子なんて言われてるけど。
この世界では余所者で、神子じゃなかったら居場所だってなかっただろうし…。
自由に使えるお金だって、何も無い。
(それでも、)
何か出来ないのかな…?
こんな時…すぐルーファス達を頼ってしまうのは、忍びないけど。
「オレに出来ること、ないのかな…」
「セツ…」
オレの心の拠り所は、ここにしかないから。
「そうだな…」
ルーファス達もちゃんと聞き入れてくれて。
それぞれに、模索してくれる。
「セツは、神子と名乗る事を…あまり好ましく思っていないのかもしれないが…」
神子が孤児院の子ども達を気に掛けている、そういった噂が広まれば。それだけでも効果があるかもしれないと、ルーファスは言う。
「そうだね、神子の名は様々な意味でも絶大だからね。」
ルーファスを通じ、孤児院の問題はアリシア様側にも多少は届いていたというし。きっかけとしては最適かもしれないと、アシュも付け加える。
「セツの言葉なら、無下には出来ないだろうしな~。アリシア様からしても大義名分ってとこで丁度良いんじゃねーの?」
珍しく、ジーナも難しい言葉で意見を述べるから。
「うん…オレ、アリシア様と話してみるよ!」
オレが何か力になれるなら。
それはまだ、形にすらならないけど。
「ありがとうございます、神子様…」
頑張っている人達のためになれるなら。
神子の名を利用しても良いのかなって、素直に思えたんだ。
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