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「ほら、セツこっちだよ!」 無事にティコを送り届けたところで。 せっかくなのでルーファスに習い、孤児院の子ども達と交流することにしたオレ達は。物珍しいのもあってか、すぐ賑やかに囲まれる。 ルーファスがまだ見習い騎士だった頃、よく駐屯地に演習に来ていて。丘の上の櫓から見えた子ども達の姿が、ずっと気になっていたんだそうな。 見習いではあれど、ルーファスはその頃から類いまれなる才能を持ち合わせていたそうで。 元々騎士の名家の生まれだったから、それだけでもかなり優遇されてたんだろうけど。 ルーファスはやっぱりルーファスで。 ただただ誠実に、ひとりの人間として。子ども達と接してくれていんたんだと…リドリーさんは教えてくれた。 当初は孤児院への寄付を、申し出たりしたらしいけど。ルーファスに対する、貴族や同僚からの風当たりを考慮して。リドリーさん達は受け取らなかったそう。 中にはやれ偽善者だの、点数稼ぎだなどと嫌味な事を言い出す輩もいるからね。 面倒な世の中なのは、何処も変わらないんだろうな…。 「ルーファス様は、子ども達にも大人気なんですよ。」 騎士に憧れる少年らは勿論、やはり女の子には不動の人気を誇るんだと…これはリドリーさんの奥さん、パメラさんからの情報で。 そういえば来て早々、女の子を泣かせてたなぁと…振り返る。 「ルーさまが来ないから、私とっても寂しかったのよ!」 「これからは、神子さまと一緒に来れば良いよね~。」 無邪気で小さな乙女達は、救世主と謳われる神子すらダシにしちゃうのだから…スゴイ。 …ってかルーの無自覚タラシは、子どもにも関係なく発揮されるんだな…。 「こんなに小さい子まで、いるのか…」 皆それぞれ院内を自由に回っていると、ルーファスはもれなくオレについてきて。小さな子ども用の部屋ってのを、一緒に覗いてみたんだけど…。 中にはベビーベッドが数台並べられており。当たり前のように赤ちゃんが寝かされていた。 それも年端のいかない子ども達が…交代で、甲斐甲斐しく世話をしてる。 フェレスティナは比較的治安も良く、大規模な紛争も殆どない平和な国らしいけど。魔族や魔物は襲ってくるし、盗賊なんかの類いもいるから被害は絶えない。 他にも不慮の事故とか、貧困などが原因で捨てられたり…そうした複雑な理由で、彼らは家族や住む場所を亡くし。リドリー夫妻の下、孤児院でみんなと助け合い…日々を暮らしているのだった。 ある程度大きくなれば、出稼ぎに行ったり。こうして下の子の面倒をみたり。小さな子ども達が一生懸命に、自分の役目を果たしていて。 (オレも、覚悟しなきゃな…) 自信は未だにない。 けど、ティコ達のことを思うと。甘えてられないなって気持ちにさせられるから…

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