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「オレも…手伝っていい?」 「セツさま?……うん、いーよ!」 思いきって赤ちゃんの世話を申し出れば。子守りをしていた少女は、にっこり笑ってくれて。 オレは早速、赤ちゃん達をそっと覗き込むと。 すやすやと眠ってたり、あわあわと不思議な声を発したりしていて… ホントちっちゃい子って、無垢で可愛いよなぁ~。 「お、抱っこして欲しいのかな?よ~しよし~、イイコだね~。」 オレを見つけると早速赤ちゃんが手足を伸ばし、必死にバタバタさせるから。オレは優しく話し掛けながら、ゆっくりと抱っこしてあげた。 久し振りに抱いた赤ちゃんは、あったかくてぷにぷにしてて。やっぱり甘くていい匂いがする。 「セツは、赤子をあやすのが上手いのだな。」 抵抗なく赤ちゃんと触れ合うオレが意外だったのか、ルーは柔く目を細めて。 「んーなんでか昔から、子どもには好かれるからさ。親戚の姉ちゃんの子とか、良く面倒みてたんだよね。」 急な仕事なんかで預かる時は、シッター代としてお小遣いも貰ってたけど。普通にミルクあげたり、オムツ変えたりくらいはやってたなぁ。 『節は子守りの才能あるね!』だなんて、良いように扱われてたんだろうけど…それでも普通に楽しかったし。 「そうか…」 答えると、ルーはオレの抱く赤ちゃんの頬を優しく指で撫でてやる。 ルーも自ら孤児院に通うくらいだから、子ども好きなんだろうなあ。ルーファスなら、良いお父さんになりそうだし…。 そんな考えが過り、何故だかつきりと…胸が痛む。 (オレじゃ、望みもないよな…) だから。 どんなにルーを好きでいても、万にひとつ想いが通じ合えたとしても。オレはコイツの子を…産むことは出来ない。 そんな現実が、オレを弱気にさせる。 「あらら~どうした~、オムツかな~?」 グズリ出した赤ちゃんに、オレは我に返ってオムツを確認する。 「変えられるのか?」 「ん~これなら…たぶん大丈夫。」 ベビーベッドに赤ちゃんをそっと寝かせ、お世話係の少女に布のオムツを渡される。 「肌の弱い子は、布も使ってたから…これならいけそうかな。」 手早くお尻を拭いて、布オムツを取り付けると。赤ちゃんは次第にご機嫌になってくれて。 「神子さまはスゴイね!」 そんなオレを見て、子ども達も歓声を上げる。 あまりに誉めるもんだから、照れ隠しに頭を掻いていると… 「セツは、母親みたいだな…。」 「へっ?」 ルーが突然感心したよう呟いて。 ポカンとしてたら、途端に少女達が目を輝かせる。と… 「ホントだ~セツさま、お母さんみたい!」 「だったらお父さんは~…ルーファスさまかなぁ?」 『え…!?』 お似合いだねって…絶対意味、解ってないでしょ…。 無邪気な笑顔で、残酷なことを口走る子ども達に。オレはバカみたく真っ赤になってしまい。 思わずルーを見上げると… 「セツと、夫婦…」 ルーも同じぐらい赤い顔し、口元を押さえて。なにやらブツブツと…言い始めていた。 え…ルーとオレが、夫婦…? 「やや、オレ男だしっ…お母さんだなんて…」 なれないよって、自分で言いながら内心へこんでたりして。子どもの言うことなんだから、笑って流せばいいのに。単純だから、あからさま動揺してしまう。 更に… 「え~でも、セツさまって女の人みたいにキレイだし。ねぇ?」 「うん、お母さんにしか見えないよね~。」 相手が何歳だろうと、所詮オレは女子に勝てないのか…少女らの発想力に抗う術なく、言葉を失う。 この子達に他意はないから仕方ないけど。 今はちょっと、キツイかも… 「いいじゃないか、その…セツなら似合うだろうし。」 お母さんがって。 ルーファスも大概だし… 「じゃあ、今からセツさまのコトは“セツお母さん”って呼ぶね!」 「ええっ…!?」 最終的には、孤児院のみんなからお母さんと呼ばれ… 「なんだなんだ~、楽しそうだな!」 そうなれば経緯を知ったジーナ達にも。 後から漏れなくして、からかわれることに…なるのであった。 や…お母さん呼びは、まあ諦めるとして。 ルーファスと夫婦みたいだとか言われちゃうとさ…もう、どうしていいか分かんなくなるんだよ。 ホントこの恋は、報われないよなぁ…。

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