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⑨
「セツさま、またお母さんになってね!ルーさまもね~!」
「ははは…」
結局、おままごとみたいなやり取りは最後まで続き。
去り際にティコにまで、『セツのこと、お母さんって呼んでいいの…?』って、かなり本気で聞かれちゃったよね…。
別に遊びで付き合う分には、構わないけど。
ルーと…そういう風に言われると、冗談で返せないからさ。
アイツもなんか満更でもない態度取り出すし…。そういうことするから、誤解しちゃうんだよ…バカ。
あ───…いっそ想いをぶちまけちゃえば、楽になれるのかなあ…。
「どうした、疲れたか?」
帰り道も、ルーの馬に揺られ。
腕の中で溜め息ついたら、案の定気付かれてしまい。こういう時だけ察しが良いなあと、こっそり苦笑う。
「ん──…子どもは元気だからねえ。」
久しぶりの外出は楽しくて。
初めてこの世界の子ども達と触れ合えたから、すっごく楽しかった。
ロロやジーナも、今日は年相応にはしゃいでたから。みんなにも息抜きになったんじゃないだろうか。
まあ、年齢には逆らえないから…かな。それなりには疲れたけど…。
「ふふ…セツは最も懐かれていたからな。」
最初は神子さま神子さま~って、子どもなりに敬ってくれたのに。途中から『お母さん』が定着したもんだから…
もう溜め息しか出ないよ。
「ルーだって…お父さんお父さん~って、大人気だったじゃん。」
女の子には本気でパパになってって、また泣きつかれてたし。ロロやジーナは男子ウケしてたけど。
ルーとアシュは終始、女の子に囲まれてたっけ…。
「ああ…それでティコから、決闘を申し込まれてしまったからな…。」
そうそう、ティコってオレにメチャクチャ懐いてたからかな?
ルーがお父さん…って話の経緯を聞いた途端、不機嫌になっちゃって。『セツを賭けて勝負だ~!』なんて騒ぎ始めちゃったんだよなぁ。
まあ、そこはちゃんと手加減したルーにあっさり敗北してたけど。
そしたらムキになって、『ぼくもセツの守護騎士になる~!』とか言い出して、意気込んでたっけ。
更には、『ルーさまに勝てたら、セツはぼくのお嫁さんになるんだからね!』…と、プロポーズみたいなのまでされてしまい。
『ならばティコに負けぬよう、私もより鍛練に励むとしよう。』…なんて、ルーファスも真顔で返すもんだから。
大人びて見えて、ルーもまだまだ子どもっぽい一面があるんだな~と…そこはかなり新鮮だった。
「疲れたけど、楽しかったね…。」
ルーの胸に身体を預ける。
目だけで仰ぎ見ると、夕焼けに蒼髪が煌めき…それがたまに紫がかって見えて。
「ああ、そうだな…。」
ゆっくり進む馬の蹄の音と、ルーの心音が重なって。なんだか耳に心地良い…。
「キレイだなぁ…」
何気ない呟きに、ルーが空を見てそうだなと相槌を打つけれど…。オレの目にはずっと、ルーしか映ってなくて。
つい、魅とれてしまう。
(好きだよなぁ、オレ…)
恋に溺れるだとか、現実には早々ない話だと思ってたけどね。
今は神子でもなんでもいいから…この場所に縋り付きたいとさえ、思ってる。
我ながらゲンキンなヤツだよなぁ、ホント。
「セツ、眠いのか…?」
更に顔を埋め、ルーの服をぎゅっと握ると。
ルーが眠っても構わないからと、子守唄みたいに囁いてくるから。オレは甘んじてルーの腕の中、全てを委ねる。
心臓の音は互いに混ざり合ってしまい、もうどっちのだか判らないぐらい…耳に響いてて。
ルーも少しは意識してくれてるかな?
なんて…儚い夢を抱きながら。
オレはうとうとと夢心地に、帰路へと赴いた。
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