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「セツさま、またお母さんになってね!ルーさまもね~!」 「ははは…」 結局、おままごとみたいなやり取りは最後まで続き。 去り際にティコにまで、『セツのこと、お母さんって呼んでいいの…?』って、かなり本気で聞かれちゃったよね…。 別に遊びで付き合う分には、構わないけど。 ルーと…そういう風に言われると、冗談で返せないからさ。 アイツもなんか満更でもない態度取り出すし…。そういうことするから、誤解しちゃうんだよ…バカ。 あ───…いっそ想いをぶちまけちゃえば、楽になれるのかなあ…。 「どうした、疲れたか?」 帰り道も、ルーの馬に揺られ。 腕の中で溜め息ついたら、案の定気付かれてしまい。こういう時だけ察しが良いなあと、こっそり苦笑う。 「ん──…子どもは元気だからねえ。」 久しぶりの外出は楽しくて。 初めてこの世界の子ども達と触れ合えたから、すっごく楽しかった。 ロロやジーナも、今日は年相応にはしゃいでたから。みんなにも息抜きになったんじゃないだろうか。 まあ、年齢には逆らえないから…かな。それなりには疲れたけど…。 「ふふ…セツは最も懐かれていたからな。」 最初は神子さま神子さま~って、子どもなりに敬ってくれたのに。途中から『お母さん』が定着したもんだから… もう溜め息しか出ないよ。 「ルーだって…お父さんお父さん~って、大人気だったじゃん。」 女の子には本気でパパになってって、また泣きつかれてたし。ロロやジーナは男子ウケしてたけど。 ルーとアシュは終始、女の子に囲まれてたっけ…。 「ああ…それでティコから、決闘を申し込まれてしまったからな…。」 そうそう、ティコってオレにメチャクチャ懐いてたからかな? ルーがお父さん…って話の経緯を聞いた途端、不機嫌になっちゃって。『セツを賭けて勝負だ~!』なんて騒ぎ始めちゃったんだよなぁ。 まあ、そこはちゃんと手加減したルーにあっさり敗北してたけど。 そしたらムキになって、『ぼくもセツの守護騎士になる~!』とか言い出して、意気込んでたっけ。 更には、『ルーさまに勝てたら、セツはぼくのお嫁さんになるんだからね!』…と、プロポーズみたいなのまでされてしまい。 『ならばティコに負けぬよう、私もより鍛練に励むとしよう。』…なんて、ルーファスも真顔で返すもんだから。 大人びて見えて、ルーもまだまだ子どもっぽい一面があるんだな~と…そこはかなり新鮮だった。 「疲れたけど、楽しかったね…。」 ルーの胸に身体を預ける。 目だけで仰ぎ見ると、夕焼けに蒼髪が煌めき…それがたまに紫がかって見えて。 「ああ、そうだな…。」 ゆっくり進む馬の蹄の音と、ルーの心音が重なって。なんだか耳に心地良い…。 「キレイだなぁ…」 何気ない呟きに、ルーが空を見てそうだなと相槌を打つけれど…。オレの目にはずっと、ルーしか映ってなくて。 つい、魅とれてしまう。 (好きだよなぁ、オレ…) 恋に溺れるだとか、現実には早々ない話だと思ってたけどね。 今は神子でもなんでもいいから…この場所に縋り付きたいとさえ、思ってる。 我ながらゲンキンなヤツだよなぁ、ホント。 「セツ、眠いのか…?」 更に顔を埋め、ルーの服をぎゅっと握ると。 ルーが眠っても構わないからと、子守唄みたいに囁いてくるから。オレは甘んじてルーの腕の中、全てを委ねる。 心臓の音は互いに混ざり合ってしまい、もうどっちのだか判らないぐらい…耳に響いてて。 ルーも少しは意識してくれてるかな? なんて…儚い夢を抱きながら。 オレはうとうとと夢心地に、帰路へと赴いた。

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