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ep.13 其の愛は誰に捧ぐ①

神淵の森での魔族襲撃事件の後、アリシア様はその処理に追われていたそうで。 一区切りついたとの報告を受け…オレの体調も幾分か良くなってきたから。例の如く、いつものメンバーで宮殿へと訪れていた。 今回は謁見の間ではなく会議室で行われるらしく。部屋に通されると、既にオリバーさんや大司教トリント様などの見知った顔ぶれが揃っていた。 人数的には、前の謁見より格段に少ない気がする。 ちなみにわけあって、前回メチャクチャ絡んできたグリモア達は、呼ばれていないらしい。 「セツ殿、その後の体調は如何かしら?魔力切れを起こしてしまったそうですが…」 「はい、もう随分良くなりました。」 ティコを助けたい一心で、無意識に発動させた治癒魔法。あれはまだオレが扱えるようなレベルの力じゃなかった。 だからその反動で気を失ってしまったし。 魔力を使いきった所為で一時期は、魔法が全然使えない状態になっていたけど…。 今は少しずつではあるものの、回復には向かっていた。 「セツ殿の力が発動したことにより、神域に何らかの影響が現れておりましたので。偵察隊が調査していたのですが…」 残念ながらそれは、結界に一時的な干渉を及ぼしただけであって。多少効果は高まっているものの…徐々に弱まりつつあるのだと、調査に携わったオリバーさんが報告してくれた。 普段は爽やかで気さくな雰囲気のオリバーさんも。隊長然としてるとキリッとしてて、なんだかいつもとは違った印象を受ける。 「その反動か、神域周辺の魔物が活性化しているようで。更に被害報告が上がってきています。まだ数件ではありますが…城壁付近でも、魔物被害が出ているようです。」 次に国内外全域を警備する治安部隊の騎士が、報告書を読み上げる。まだ被害数は少ないけど、着実に時は迫っているみたいだ。 「となると…やはり結界の再構築が、必要なのでしょうが…」 アリシア様は神妙な顔で思案する。 「セツ殿、力の方は?」 重苦しい空気の中、トリント様がオレに声を掛け。すると一斉に、みんながこっちを見てくるものだから…。 いきなりプレッシャーをかけられ、緊張したけれど。オレは遠慮がちながらも、ゆっくりと口を開いた。 「すみません、まだ自分ではコントロール出来なくて…」 瀕死の子どもを助け、召喚された魔物を一瞬で消しさった力は絶大で。あの場にいた騎士達からは、神子の奇跡だと称賛されたんだけども。 当のオレには力を振るった自覚はなく、それを制御することも出来ない。 加えて身体もまだ本調子とはいかず、魔力だって戻り切ってなかったもんだから…。 「左様ですか…それでも神子殿が奇跡を起こしたのは事実。騎士の士気向上や、民衆への不安解消には成り得ましょうぞ。」 あまり気に病まぬようにと、トリント様は励ましてくれて。この場に出席する全員が賛同するよう、頷いてくれてた。 なんだか前回と違い、みんなの視線があったかくて優しい。 「セツ殿が焦る必要はありませんわ。結界はひとつではございませんし…我々とて神子の存在に甘んじ、ただ黙って指を咥えているわけには参りませんから。」 祖国の危機だからこそ、皆が協力して立ち向かわねばと。アリシア様も凛々しい眼差しで告げた。

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