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「今回の召集理由は、その件だけではございません。」 本題は別にあるのだと、アリシア様は話を切り替え。オリバーさんに目配せをする。 「此方は、密偵からの報告なのですが…」 オリバーさんは声を潜めるよう話し始める。 「グリモア殿に何やら不穏な動きが、あるようです。」 その名前につい反応してしまうオレは、ビクリと肩を揺らす。 グリモアは先日の謁見で、オレ達にやたらと絡んできた偉そうな大臣だ。そりやもう如何にもって感じの、腹黒政治家なイメージそのままの男だったけど。 本当に、裏の顔があったんだな… フェレスティナの頂点には、当然ながら女王陛下が君臨していて。ざっくりと説明すると…サイドには隠居した前女王や、引退した宰相や元帥といった重鎮OBで構成された元老院。 更には神子が現れた時に限り、特例で守護騎士の地位も彼らとほぼ同等の権利を得ることとなる。 その下には主に政を司る宰相、軍や治安などを管理する元帥、貴族のみで構成された貴族院が横へと並ぶ。 で…グリモアは貴族院の頂点、三大臣の最年長であり。他2人を手玉に、好き勝手やってるようなヤツらしく…。 貴族院なんて、所詮は権力者の不満を生まないための、名ばかりの組織。それでも発言力を持ってるから。なかなかに面倒な相手なんだそう。 コイツが女王様を毛嫌いしてるらしく、何かと難癖つけるのが常で。かといってスパッとリストラするわけにもいかないって話だから…(まつりごと)は面倒くさいよなあ。 …と、これがグリモアが呼ばれなかった理由。 「まだはっきりとした証拠はございませんが、妙な輩との繋がりもあるようなので…」 「そうですか…」 ああいう野心家は、火が着くと何をしでかすか判らないもんな…。なので今後は宮殿敷地内であっても、一層用心するようにと忠告を受けた。 ただでさえ、オレの行動範囲には限りがあるのに。これじゃ生きた心地がしないよ…。 「セツ、我々がついているから。」 「ルー…ん、ありがとう。」 不安と不満が顔に出てたんだろう、オレの傍に立つルーがポンと肩を叩いて励ましてくれるから。 やっぱりルーの存在は、何より心強い。 グリモアについてはまだ不明瞭な点も多いため、下手に事を荒立てるわけにもいかず。 とりあえずは様子を伺いながら…引き続き警戒にあたるということで、今回の議会は終了した。

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