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その後ルーファスは、しばらくすると…何事もなかったよう戻って来て。途中からだったけど…お茶会にも間に合い、普通にみんなと過ごしていた。 あまりに普通だったから、世間話するみたく女性のことを聞いてみようかとも思ったんだけど…。 口を開いては言葉にするのを、憚られてしまい。 そんなオレの様子を知ってか…ロロ達も自分達の方からその話題を切り出すことを、躊躇っているように思えた。 みんなが気を遣ってくれたから。お茶会中はずっと楽しげな雰囲気では、あったんだけどね…。 肝心のルーが何も言わないから。 もしかしたらオレの杞憂で…思うほど、大したことじゃないのかもしれないし。無理矢理聞き出したりして、不躾だなんて思われたくもないから。 もう忘れようって思うんだけどさ… オレの空元気は繕う分だけに。どうにも空回って、しまうみたいだ。 「今日はまた、元気がなかったな…」 気付かなくていいことに、鋭敏になるルーファスは。今夜も日課の如く、オレの部屋へとやって来る。 何気に風呂上がりだから、着崩した部屋着がいつにも増して色気を放ってて。そうやってオレを案じ、急いで来たからなのか…髪もちょっと濡れてるもんだから。 まさに水も滴るなんとやら…だ。 いつもなら、ドキドキして心臓に悪い!なんて落ち着かないところだろうけれど…。 今夜のオレは違う意味で、ずっとソワソワしっぱなしだった。 「グリモア殿の事が、気になってるのか…?」 ルーはオレが、議会の内容を気にしてると思ったんだろうけど…。 残念ながら、そこは的外れで。オレは答えることなく、目線を避けるよう下へと落とす。 それを応と捉えたのか…ルーは大きな手で、オレの髪を慰めるかのように…優しく撫でてくれた。 お前が甘く触れる度に。 オレが追い詰められるとも、知らないで…。 「まあ、そんなとこ、かな…」 ぶっちゃけ今は、グリモアなんかどうでもよくて。一番の問題は、目の前の騎士様…なんですけどね。 それは言えないから、ルーの勘違いに便乗しておく。 「そう、か…何かあったら遠慮せず言ってくれ。どのような些細なことでも、構わないから…」 ルーはくしゃりと笑い、オレの頬に触れる。 困らせたくなくないから…我慢してるだけなのに。なんだか悪いことしてるみたいで、胸の奥が痛い。 コイツにそんな目で見つめられると、すぐ泣きそうになるから…だけど今は、我慢しなくちゃ。 「その、セツ…」 そこでルーが何か言いかけたんだけど。 「いや…なんでもない。」 言葉を飲み込み、結局は黙り込んでしまい。 これ以上ふたりきりでいるのは、さすがにオレも苦しくて。 今にも変なことを、口走ってしまいそうだったから… 「ごめん、ルー…今日は、疲れちゃったから…」 「ああ、すまなかったな…」 眠りたいと告げれば、ルーは慌てて立ち上がり。 そのまま足早に扉まで進むと、 「セツ…おやすみ。」 そう寂しげに囁きながらも、思いの外すんなりと…出て行ってしまった。 まだ寝るには早い時間だったから、ちょっと不自然だったかもしれない。でも…今日はさすがに、無理だ。 ルーの顔を見ると、どうしても昼間の女性が頭をちらついて。バカみたく嫉妬しちゃうから… 見苦しいじゃんか…男のクセに、さ。

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