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⑥
「もう、寝よ…」
ひとりでウダウダ考えたって時間のムダ。
嫌なことは早く寝て忘れようと、全然眠くない頭をぼすんとベッドへと埋めたんだけれど─────
「あ、れ…?」
ふとベッドの下に、何か落ちているのをみつけて。オレは身を乗り出しソレを拾う。
と、そこに落ちていた物は…
「コレって…」
手に取った物は、ビロード貼りの小さな箱で…。
如何にもな形状に、オレはドキリとする。
オレのじゃないから。きっと今し方ルーが、落として行っちゃったんだろうけど…。そしたら今日の事が嫌でも頭を過り、内心穏やかではいられなくなるから。
「指輪、だ…」
つい開けてしまい、すぐさま後悔に苛まれる。しかもその指輪には、見覚えがあり───…
(城下に行った時の、だ…)
オレがちょっとお高そうな店のショーウィンドウを、たまたま見ていて。
造りはシンプルなんだけど。幻想的な羽を型どったシルバーのリングが、すっごく綺麗だなって。何とはなしに話してたヤツじゃんか、コレ…
けど、なんでルーがこんな物を…?
(────ああ、そういうことか…)
“それって婚約者なんじゃ────”
思わずジーナの台詞が脳裏に突き刺さり。女性と親しげに話すルーの姿と、ピタリ合致する。
こうなってくるともう…疑う余地なんて、無いんじゃないだろうか。
(なんで、よりによって…)
オレが綺麗だって言った指輪なんかを、選ぶんだよ?
ぼんやりしてきた視界で見つめると。
魔力加工が施されてるっていうその指輪は、小さな石を反射させ、キラキラと七色に輝いており。
その美しさの、なんと残酷なことか…
アイツも結構気に入ってたし、それであの女性 に…
(もう、やめよう…)
こんな形で真実を知ってしまい、胸が痛む…けど。
元々オレには許された感情じゃないんだし、叶う見込みだって無かったんだから。
今気付けて、寧ろ良かったんだ…。
(落とすなよ、バカ…)
大事な婚約者への指輪だろ?
オレの気も知らないで、こんなドジ踏みやがってさ。いつもはしっかりしてるクセに…
「…ッ……」
指輪を捉える視界がうるりと歪み。
もう限界だ、頭ん中ぐちゃぐちゃだし…こればっかりは耐えられそうにないよ。
そしたら涙目もいっぱいになり、いよいよ零れそうになっていると…
遠慮がちに扉がノックされ、思わず肩が震える。
慌てて涙を拭い、どうにか返信をすれば…。
今しがた出ていってたはずのルーが、気まずそうにまた部屋へと入ってきて。
その様子は、何処か落ち着かないように思えた。
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