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「セツっ…それは、」 手にしていた箱を認めたルーは、いよいよ焦ったよう言葉を濁し。ぎこちないまま、オレの方へと近付いてくるけど。 あからさま過ぎる様を、見せ付けられたオレは。更にドス黒い感情を、(いだ)く羽目となる。 「ごめん、中…見ちゃって…」 ルーのだよねって、白々しいったらありゃしない。しかもルーが曖昧に「ああ…」なんて、返事するもんだから。余計にイライラするし。 なんなんだよ… 「コレっ、プレゼントだろ?もしかして…今日会ってた女の子にでも、あげるヤツだったん、じゃっ…」 もうどうでも良くなり。ヘラヘラしながら、投げやりに確信へと迫ると。ルーは訝しげに眉を潜めてしまい… けどオレは意に介さず、勢い任せに続けた。 「遠縁って聞いてたけど、すっごく仲良さそうだったし?こっちの世界じゃ、親戚同士でも結婚とか、割りと当たり前なんだろ…」 婚約者、いたんだなって。 自己完結から一気に捲し立てる。 ルーが何か言いたげだったけど。聞きたくなんてないから、間髪いれず喋り倒しすしかなかった。 「そんな素振りなかったから、オレ全然気付かなくてさっ…。お前も水臭いじゃん!そういうの、いるならいるって話してくれればっ…」 オレには誰より気を許してくれてるって、勘違いしてた。 けど、たった数ヶ月だけだけど…多少の身の内を明かせるぐらいには、打ち解けてたと思ってたから。 今日みたく、隠し事するかのような態度を取られてさ。自惚れもいいとこだとは思うけど、すっごくショックだったんだ…。 「それは、違う───…」 否定を口にしながらも。 ルーはオレから目線を外してしまい。 「違うって何が?あの子のこと、なんか誤魔化そうとしてたじゃんか…!」 自分でも、何に怒ってんのか解らなくなってて。半泣きになりながら、理不尽に八つ当たりし始める。 そりゃルーも困惑するに決まってるし。いきなり取り乱すオレに、コイツはどうしていいか分からないのか… 黙ったまんま、じっとオレの言い分を聞いていた。 「意外だよなっ、みんなからも真面目だなんだって聞かされてたけど。オレなんかにも結構スキンシップしてたしさ…あの子にも、そゆことっ…」 これだけ完璧な男なら、モテて当然。 誠実そうにみえるけど、実はアシュくらい手馴れてるんじゃないの、とか…思ってもいないことまで口走る。 そうなるともう、昂った醜い感情は限界で。 辛辣な言葉と共に堰を切ったよう、一気に溢れ出した。 「セツ…」 「そりゃ、オレとお前なんて、神子と守護騎士ってだけだしッ…この関係だって義務でしかないだろうけど、」 それでも特別なんじゃないかって。 どっかで期待してしまった。 だってさ、ルーのオレへの接し方とか…近くて甘くて。まるで恋人にでもするみたいに、いつもドキドキさせられてたから。 オレじゃなくてもさ…勘違いするに決まってるだろ? 「そういう、大事な人がいたんならさッ…言ってくれれば、よかっッ…」 本当は聞きたくないくせに。 本音は両目から、ボロボロと吐き出される。 「結局オレは、お前にとって…神子ってだけの価値しかなかったんだ…」 違う、そうじゃない。 本当に苦しかったのは、ルーに好きな人が…婚約者がいたってことで。それはこの歪な恋心を隠すための、ほんの言い訳にしか過ぎやしない。 (指輪なんて…) しかもあの日デートみたいだなって、浮かれてた日に。一緒にみつけて綺麗だなって。したらお前が、買ってくれようとするから。 嬉しかったけど、男が男から指輪なんて貰うのも変な話だし。その時はまだ、どこか照れくさかったから… オレ我慢したんだ。 ホントはすっごく、舞い上がってたくせにさっ…

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