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⑦
「セツっ…それは、」
手にしていた箱を認めたルーは、いよいよ焦ったよう言葉を濁し。ぎこちないまま、オレの方へと近付いてくるけど。
あからさま過ぎる様を、見せ付けられたオレは。更にドス黒い感情を、抱 く羽目となる。
「ごめん、中…見ちゃって…」
ルーのだよねって、白々しいったらありゃしない。しかもルーが曖昧に「ああ…」なんて、返事するもんだから。余計にイライラするし。
なんなんだよ…
「コレっ、プレゼントだろ?もしかして…今日会ってた女の子にでも、あげるヤツだったん、じゃっ…」
もうどうでも良くなり。ヘラヘラしながら、投げやりに確信へと迫ると。ルーは訝しげに眉を潜めてしまい…
けどオレは意に介さず、勢い任せに続けた。
「遠縁って聞いてたけど、すっごく仲良さそうだったし?こっちの世界じゃ、親戚同士でも結婚とか、割りと当たり前なんだろ…」
婚約者、いたんだなって。
自己完結から一気に捲し立てる。
ルーが何か言いたげだったけど。聞きたくなんてないから、間髪いれず喋り倒しすしかなかった。
「そんな素振りなかったから、オレ全然気付かなくてさっ…。お前も水臭いじゃん!そういうの、いるならいるって話してくれればっ…」
オレには誰より気を許してくれてるって、勘違いしてた。
けど、たった数ヶ月だけだけど…多少の身の内を明かせるぐらいには、打ち解けてたと思ってたから。
今日みたく、隠し事するかのような態度を取られてさ。自惚れもいいとこだとは思うけど、すっごくショックだったんだ…。
「それは、違う───…」
否定を口にしながらも。
ルーはオレから目線を外してしまい。
「違うって何が?あの子のこと、なんか誤魔化そうとしてたじゃんか…!」
自分でも、何に怒ってんのか解らなくなってて。半泣きになりながら、理不尽に八つ当たりし始める。
そりゃルーも困惑するに決まってるし。いきなり取り乱すオレに、コイツはどうしていいか分からないのか…
黙ったまんま、じっとオレの言い分を聞いていた。
「意外だよなっ、みんなからも真面目だなんだって聞かされてたけど。オレなんかにも結構スキンシップしてたしさ…あの子にも、そゆことっ…」
これだけ完璧な男なら、モテて当然。
誠実そうにみえるけど、実はアシュくらい手馴れてるんじゃないの、とか…思ってもいないことまで口走る。
そうなるともう、昂った醜い感情は限界で。
辛辣な言葉と共に堰を切ったよう、一気に溢れ出した。
「セツ…」
「そりゃ、オレとお前なんて、神子と守護騎士ってだけだしッ…この関係だって義務でしかないだろうけど、」
それでも特別なんじゃないかって。
どっかで期待してしまった。
だってさ、ルーのオレへの接し方とか…近くて甘くて。まるで恋人にでもするみたいに、いつもドキドキさせられてたから。
オレじゃなくてもさ…勘違いするに決まってるだろ?
「そういう、大事な人がいたんならさッ…言ってくれれば、よかっッ…」
本当は聞きたくないくせに。
本音は両目から、ボロボロと吐き出される。
「結局オレは、お前にとって…神子ってだけの価値しかなかったんだ…」
違う、そうじゃない。
本当に苦しかったのは、ルーに好きな人が…婚約者がいたってことで。それはこの歪な恋心を隠すための、ほんの言い訳にしか過ぎやしない。
(指輪なんて…)
しかもあの日デートみたいだなって、浮かれてた日に。一緒にみつけて綺麗だなって。したらお前が、買ってくれようとするから。
嬉しかったけど、男が男から指輪なんて貰うのも変な話だし。その時はまだ、どこか照れくさかったから…
オレ我慢したんだ。
ホントはすっごく、舞い上がってたくせにさっ…
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