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ep.14 偲ぶる恋に、騎士のくちづけを①

「セツ、その手…」 「ふぇ?」 次元は違えど、指輪に込める想いの意味は…万国共通なようである。 ルーがプレゼントしてくれた指輪。 片想いしてる身としては、浮かれないわけがなくて。…といっても、ルーに深い意味はないようだったから。お気楽に捉え、右手の薬指に嵌めてもらったまま…オレは朝を迎えた。 (どんな理由でも嬉しい…) 例えルーに他意はなくとも。 誰だって好きな相手からプレゼントされたら、そりゃ嬉しいワケで。 その中でも指輪は特別。 朝目覚めてからもずっと、指輪をこっそり眺めては…ニヤニヤが止まらないオレ。 そんな調子で何も考えず。指輪をしたまま、鼻歌交じりで食堂へと向かったんだけど…。 「その指輪は、もしかして…」 「え…と、ルーに貰ったんだけ、ど…?」 オレの異変に目敏く気付くロロ達が、指輪を認めた瞬間固まってしまい。互いに顔を見合せるものだから、オレはハテナと首を傾げる。 「仲直りしたんだろうなぁとは、思ったけどねぇ…」 まあ昨日はあれだけ微妙な空気だったのが、今朝にはふたり揃って仲良くやって来たからね。 それには安堵するアシュだったけれど…どうしても指輪が気になるのか、何処か複雑な表情をしていた。 「…で、その指輪は捉えて良い…ということなのかな?」 …んん? アシュの曖昧な問いにはついていけず、オレは更に首を捻る。 「ルーがセツに指輪を贈って、その指に嵌めたんだよね?…」 「あっ…えと、そだけど…」 なら意味だよね?と…ロロまでオレを問い詰めるから。 オレは頭を抱えつつ、ルーを振り返ったのだけど…。 互いに状況が飲み込めず、謎は深まるばかりで。 「ルー、貴方はちゃんと意味を理解しているのですか?」 「…ん?何かまずいことでもあるのか?」 ヴィンに問われても、(とぼ)けた答えしか返さないルーに。彼は眼鏡を抑え、大きく嘆息した。 「あー…これだから無自覚は…」 「計算でやっているのなら、さすがの僕でも敵わないなぁ。」 ジーナもアシュも、きょとんとするルーに対し…呆れたよう苦笑を漏らし。 「セツの国では、どうだか知らねぇけどよ。こっちじゃそれなりに意味があってだな…」 「基本的には恋人とか、夫婦とか?好きな人に贈るのが一般的だよね~。」 年少組が説明を始め、オレも段々と空気を察し… 年長組が、トドメの一撃を放つ。 「僕も親しい女性ならば、贈り物を渡したりもしていたけれど。指輪はさすがに避けていたなぁ。相手に勘違いをさせてしまうからね。」 「右手の…しかも薬指に指輪を嵌めたということはですよ?ふたりは結婚の約束を交わしたと、」 ──そういうことで宜しいのですね? ヴィンの台詞に、オレはやっぱりな…と。嘆息して顔を押さえた。 「けっ───」 「ええ、あくまで婚約したという話ですが。ちなみに左手は正式な夫婦(めおと)となる…という意味ですね。まさか貴方が、知らないわけではないでしょう?」 常識です!とピシャリ良い放つヴィンに、絶句するルー。 確かに…ロロ達でさえ理解してるような一般常識だから。ルーが知らないわけ、ないよな…。

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