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ep.15 選択肢の無い物語①
「おはよ、ルーファス…」
「ああ…おはよう、セツ。」
この世界に来てから、オレはほぼ毎日…朝はルーファスに起こしてもらっていた。
最初こそ、朝寝坊がきっかけだったけども。
そのうちに、起こしてもらいたいって下心が湧いて。
わざと寝坊してたわけでもないんだけど…。
単純にルーに甘えたくて、自分から率先して起きることはなくなってた。
けど…
「早いな、良く眠れなかったか…?」
気を失って倒れたオレが、既に起きて着替えまで済ませていて。不思議に思ったのか、ルーは心配そうに問い掛けてくる。
「ううん…ちょっと早く目が覚めただけだよ。」
平気だよって、取り繕って笑ってみせたら。
ルーは一応、安堵したように表情を和らげてくれた。
それでも、何処か互いにぎこちないのは…仕方ないんだろう。
「おや、貴方が早起きとは珍しいですね。」
いつも一番乗りらしいヴィンが、食堂へとやって来て。既に来ていたオレを見て、開口一番に眉を顰める。
ヴィンもきっと、ムーバの件を知っているからか…言葉自体は、からかっているようでいて。
その実、いつもより気遣いみたいなものが感じられた。
「やはりまだ、横になっていた方が良いのでは…」
ルーがオレの身を案じ、支えるよう背中に手を伸ばすけれど。
「平気だよ…まだ朝ご飯には早いし、お腹もあんまり空いてないからさ。ちょっと散歩でもしてくるよ…!」
オレは出来る限り平静を装いながらも。
不自然に、その手をすり抜けてしまった。
間を与えず、俯き気味にオレは歩き出す。
たぶん、ふたりは気付いてる。
だって一瞬だけ目が合ったルーは、明らかに動揺していたし。ヴィンでさえ、かなり驚いた顔をしてたから…
けど今のオレには、これが精一杯で。
この場を上手く凌げるような演技力も余裕も、全然無かったから。
少しでも悟られまいと、逃げるようにして。
オレはひとり屋敷の外へと駆け出していた。
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