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③
(ヤバい……泣きそうだっ…)
独りになれる場所を求め、庭園奥を疾走し。林の中まで一気に駆け抜ける。
ジーナとロロにあんな風に言われてしまったら…つい心が折れそうになっちゃって。
オレは誰にもみつからないようにと、木々の中を闇雲に彷徨った。
すると…
「そんなに取り乱して、何処に行くの?」
「…ア、シュ……」
体力の限界で息を切らし、立ち止まっていると…背後から声を掛けられ。ドキリとして、胸を押さえ振り返る。
そこには、憂いをその目に浮かべるアシュレイの姿があり…。視線が合わされば遠慮がちにも、ゆっくり此方へ近付いて来た。
「なんて顔をしているんだい…」
痛々しげに表情を歪ませたアシュは、オレの目元へと手を伸ばす。
人知れず毎夜泣いていたせいか…腫れぼったいそこを、アシュは労る指でそっとなぞった。
反応に困るオレは、ただ黙って目線を彷徨わせる。
「何か、悩んでるんだろう…?」
話してごらんよと、アシュも優しく諭してくれるけれど。甘えそうになるのを耐え忍び、オレは黙ったまんま首を横に振った。
『……………』
その時微かにだけど、近くで話し声がするのに気付いて…。思わずアシュを見上げたら、制するよう唇に指を当てられる。
彼の目配せに従い…暫し声がする方へと、お互い意識を向けた。すると…
(ヴィンと、ルー…だ…)
息を潜め、木陰に身を隠す。
隙間からこっそり覗けば、ふたりが対峙しているのが見えて。
神妙な面持ちで、何かを話していた。
「どうしたのですか?セツも、貴方も…」
どうやらヴィンもジーナ達と同じように、オレ達のことを心配していたみたいで…。
特にルーとは元々同じ部隊で、仲が良かったから。親友として…この状況を黙って見過ごすことが出来なかったんだと思う。
「ジーナとロロが、随分と落ち込んでいましたよ。自分達の所為で、セツを危険に晒してしまったと…」
孤児院での悲劇が、原因ではないのかと…ヴィンはルーを問い詰める。
「…たぶん、それは違う…」
すると黙って聞いていたルーは、ヴィンの言葉を瞑目して否定した。
…が、それ以上は何も語らないから。
ヴィンはもどかしげに眼鏡を正すと、深く溜め息を漏らす。
「…では一体、何が原因だというのですか?」
あの一件でオレは傷付き倒れ、翌朝顔を合わせて以来…ルーとはずっと、ギクシャクしている。
平静を装ってるつもりだったけど。
さすがにあからさまだったよな…今まで散々くっついてたのにさ。
そうやって、何かと理由を付けて避けてたから。
でも今は、その近過ぎた距離感がしんどくて。
どうしても、耐えられなかったんだ…。
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