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「オレなんて、まだまだだよ…」 実際、戦うってなったらオレはホント無力だから。 いつだってルーに助けられてばっかだし… 何度も危険を犯して、みんなにも迷惑かけっぱなしだもんな…。 「そんなことはない。セツは常に、努力しているじゃないか。」 自分の意志とは関係なく神子にされて。 苦手な勉学にも励み、世界を救うため強くなろうと必死で前へと進んでいる。 それをルーはちゃんと見ている、知っているからって…。どんな時でも、オレの味方でいてくれるから。 (ああ…やっぱり、) 好き。 例えその二文字を、声に紡ぎ出せなくても。 たぶんもう、バレバレなんだけど… 想うだけでも…なんて。 ちょっと、ズルいのかな… 「…ぁ……」 ほんの一瞬でも、その目に捕まってしまうと。 隠しきれてない下心が、全部溢れ出してしまいそうになる。 誤魔化して、先程の精霊の光に視線を戻したら…。 それは蛍みたいにふわふわと、花畑の方へと飛んで行き…一輪の花へと、ゆっくり降り立った。 「ああ…ちょっと待っていてくれ。」 何かを察したルーが立ち上がり、光が降りた場所へと向かう。 そのまま手を伸ばし、風の精霊が留まる花を摘み取ると…。ルーはそれを手にまた、此方へと戻って来た。 「どうしたの?」 悪戯な笑みを湛えるルーに、首を傾げると。 「風の精霊は、随分とお前に興味があるみたいでな。」 そう言って、ルーは花を示す。 それはここに咲き誇る花の中でも、珍しい種類の花らしくて。薄青の花弁に、翡翠の光がゆっくり弧を描き浮遊し始める…と。 「この花を、セツに贈りたいのだと…」 「え…」 言ってルーは、その花をオレの髪へと飾ってくれて。すると精霊は、まるで喜びを表すかのよう…目の前で飛び回った。 「ふふ…似合ってると、言いたいらしい。」 可憐だなんて、歯が浮くような台詞を。さらりと口にするルーファス。 不意打ちはやめてほしい… コイツはすぐ思ったことを言ってしまうから。 困るんだよ…そんな風に見つめられたら。 オレはすぐ、捕まってしまうんだから…。 「ル…」 言葉なく、愛おしげに注がれる眼差しに。 心臓が早鐘を打つ。 なんとかして、この空気から脱け出さなくちゃって…そう思うのに。 本音は今すぐにでも触れられたいだとか。 邪な心に、負けてしまいそうになるから。 「セツ…」 花飾りが添えられた髪に触れられ、射抜かれる。 どうしよう、また逃げないと… 追い詰めるよう早まる心拍数に、オレが限界を感じていると───── 「セツ様~、ルーファス様~!」 「あっ…」 幸か不幸か… オレ達を探すメイドさんの声に遮られて。 内心ほっとしながらも、何処かがっかりしてる自分に自嘲する。 「ヴィンセント様が、宮殿よりお戻りになられまして。皆様にお話があるとのことですので…」 メイドさんに告げられ、オレがルーを見上げると… なんとなく寂しそうに見えたのは、気の所為なのかな…? 「私は先に戻りますので…」 いそいそと、この場を後にするメイドさんは。 去り際オレに、 「お邪魔して申し訳ありません~!」…と、なんだかバツが悪そうな顔をして去って行ってしまい。 さすが戦えるメイドさんなだけあって、動きが颯爽としてるな… 「行こうか、セツ…」 名残惜しそうな声で先を行こうとするルーに、オレも胸が締め付けられて。 「セツ…?」 無意識に、ルーの袖を掴んでしまった。 解ってるのに、また悪いクセが出ちゃうから… ほらやっぱり…ルー、メチャクチャ困ってんじゃんか。 「どうした…?」 歩きを止め振り返るルーから、苦笑が聞こえてくる。けどオレは黙ったまんま、地を見つめていたんだけど。 「困ったな…」 ぽつりと余裕なく呟きながらも、ルーに手を握られて…じゃれるみたく、指が絡められる。 戸惑いながらも、オレはそれを甘んじて受け入れてしまうから… 擽ったい密やかな熱に。少しの間だけ酔いしれた。 「もう、行かねば…」 ヴィンが待っているからと。 言いながらルーはオレの手を慈しむ。 オレも頷くクセに、自分からはどうしても離れたくないから。 でも… 「行こっ…か…」 自ら切り出し、見上げたら… 互い、泣きそうなくらいの苦笑を浮かべており。 通じ合ってるからこそ、何も言わず。 どちらとなく離れる。 (ごめん、ルー…) オレは言わない、だからルーも何も聞かない。 それはあまりに残酷で…きっとルーを苦しめてるはず。 それでもお前は… オレを信じて、待っていてくれるのかな? 「ん…何か言ったか?」 「ううん、なんでもないよ…」 口から溢れた謝罪。 それすらも、今は言葉にすることは出来ないから。 ルーは何か言いたげな顔をしていたけれど…。 オレは敢えて見ないよう、ルーの背中を押して促し。ヴィン達が待つ屋敷へと向かった。

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