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「お疲れ様、ヴィン。」 「セツ、ルーファスも…皆揃いましたね。」 ヴィンからの招集を受けオレ達が戻ると…既にみんな談話室へと集まっていて。何やら緊迫した空気を読み取り、急いでみんなが囲むソファへと着席する。 ルーはオレの後ろの定位置へと、落ち着いた。 「何かあったの?」 不安に駆られ問えば、ヴィンはいいえと首を振る。 「まだ大事には至りませんが、気になる点がいくつかありましたので…」 まずは、前回の議会でもあった治安の悪化について。 場所によって差はあるものの、神子の封印が弱体化している結界周辺への対応に追われ。騎士団を各地に派遣する準備など…いよいよ慌ただしくなってきたのだという。 「今まで被害が無かった地域…そしてフェレスティナ周辺でも、魔物による被害報告が増え始めています。」 それも少しずつ城下へ…神子の元へ近付くかのように。知能の低い魔物が、意志を持って狙って来ることはまず無いから…。 「魔族か…」 「ええ…。議会でもグリモアが一枚絡んでいたのではないか、と。」 確かに…こないだの一件で、魔族であるムーバとの繋がりが露呈したのだけど。 ふたりの会話から、神淵の森での襲撃だってグリモアが手引きしたみたいなことを、言ってたからな…。 「人間と殆ど関わりを持たないはずの魔族が、こうも早くセツ…神子の存在を把握していたのだからねぇ。」 グリモアが神子の情報を売ったとみて、間違いないだろうと…アシュは溜め息混じりに断言する。 今となっては、その当事者がもういないから…推測でしかないのだけど。 「ほんと、イカれてるよな…」 グリモアの名が上がった途端、拳を打ち鳴らし怒りを滲ませたジーナ。ロロも眉間を険しくさせ、奥歯を噛み締めている。 ふたりはオレを危険な目に遇わせてしまった責任を、スゴく感じてたから…。グリモアのことが、心底許せないんだろう。 「欲に溺れた者と正義は、相容れないものだな…」 世界中の大多数が、平和を望んでいても。 たった一握りの人間が、それを善しとはしなくて。 寧ろ私欲の為に戦争を起こしたり、目先の利益だけを選ぶ者もいるからと…ルーは厳しい表情で語る。 それはオレの世界も同じ。 嫌でも目にしてきた現実だから…やるせないけど、ルーの言いたいことは最もだと感じた。 「グリモアは、魔族によって殺害されてしまいましたが…彼の息がかかった者も、まだ残っていますからね。早急に対処するにせよ、今後も用心するにこしたことはないでしょう。」 平和であれば、みんな幸せ…とはいかないなんて、悲しい世の中だけど。 こればかりは、どうしようもないのかな…。 「ですので、フェレスティナと周辺地域の警備は強化されますが…油断せぬよう、軽率な行動は慎み。肝に銘じておくのですよ、?」 「は、はいぃ…」 名指しで語尾を強調され、萎縮するオレ。 ヴィンの厳しい指摘の通り…危険な目に遇う時って、大体オレの警戒心の無さが、原因なんだもんね…。 言い訳かもしんないけど、現世は治安も比較的良かったし。命を狙われた経験なんて無かったからなぁ…。 屋敷での生活も快適だしさ。 甘えてる自覚はあるから、もう少し危機感は持たなきゃとは思うよ。 さすがにムーバの時は、本当にヤバかったもんな…

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