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③
「お疲れ様、ヴィン。」
「セツ、ルーファスも…皆揃いましたね。」
ヴィンからの招集を受けオレ達が戻ると…既にみんな談話室へと集まっていて。何やら緊迫した空気を読み取り、急いでみんなが囲むソファへと着席する。
ルーはオレの後ろの定位置へと、落ち着いた。
「何かあったの?」
不安に駆られ問えば、ヴィンはいいえと首を振る。
「まだ大事には至りませんが、気になる点がいくつかありましたので…」
まずは、前回の議会でもあった治安の悪化について。
場所によって差はあるものの、神子の封印が弱体化している結界周辺への対応に追われ。騎士団を各地に派遣する準備など…いよいよ慌ただしくなってきたのだという。
「今まで被害が無かった地域…そしてフェレスティナ周辺でも、魔物による被害報告が増え始めています。」
それも少しずつ城下へ…神子の元へ近付くかのように。知能の低い魔物が、意志を持って狙って来ることはまず無いから…。
「魔族か…」
「ええ…。議会でもグリモアが一枚絡んでいたのではないか、と。」
確かに…こないだの一件で、魔族であるムーバとの繋がりが露呈したのだけど。
ふたりの会話から、神淵の森での襲撃だってグリモアが手引きしたみたいなことを、言ってたからな…。
「人間と殆ど関わりを持たないはずの魔族が、こうも早くセツ…神子の存在を把握していたのだからねぇ。」
グリモアが神子の情報を売ったとみて、間違いないだろうと…アシュは溜め息混じりに断言する。
今となっては、その当事者がもういないから…推測でしかないのだけど。
「ほんと、イカれてるよな…」
グリモアの名が上がった途端、拳を打ち鳴らし怒りを滲ませたジーナ。ロロも眉間を険しくさせ、奥歯を噛み締めている。
ふたりはオレを危険な目に遇わせてしまった責任を、スゴく感じてたから…。グリモアのことが、心底許せないんだろう。
「欲に溺れた者と正義は、相容れないものだな…」
世界中の大多数が、平和を望んでいても。
たった一握りの人間が、それを善しとはしなくて。
寧ろ私欲の為に戦争を起こしたり、目先の利益だけを選ぶ者もいるからと…ルーは厳しい表情で語る。
それはオレの世界も同じ。
嫌でも目にしてきた現実だから…やるせないけど、ルーの言いたいことは最もだと感じた。
「グリモアは、魔族によって殺害されてしまいましたが…彼の息がかかった者も、まだ残っていますからね。早急に対処するにせよ、今後も用心するにこしたことはないでしょう。」
平和であれば、みんな幸せ…とはいかないなんて、悲しい世の中だけど。
こればかりは、どうしようもないのかな…。
「ですので、フェレスティナと周辺地域の警備は強化されますが…油断せぬよう、軽率な行動は慎み。肝に銘じておくのですよ、セツ?」
「は、はいぃ…」
名指しで語尾を強調され、萎縮するオレ。
ヴィンの厳しい指摘の通り…危険な目に遇う時って、大体オレの警戒心の無さが、原因なんだもんね…。
言い訳かもしんないけど、現世は治安も比較的良かったし。命を狙われた経験なんて無かったからなぁ…。
屋敷での生活も快適だしさ。
甘えてる自覚はあるから、もう少し危機感は持たなきゃとは思うよ。
さすがにムーバの時は、本当にヤバかったもんな…
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