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「…なら、しばらくは外出も無理そうだね…」 ロロが寂しそうに呟き。 頭を過るのは、孤児院でのこと。 目覚めてすぐ、気になって確認してもらったけど…。 少年達を追っていたグリモアの手下は、途中で遭遇したジーナが倒したらしくて、みんな無事だったそう。 因みに、小屋の見張りをしていた残りの手下は皆、ムーバに殺されていたらしい。 「ティコも心配してたし…あの少年達も傷付けちゃったからね…」 どんな形であれ…神子を騙し、グリモアの口車に乗ってしまった事実は覆らないし。 その罪を許したとしても。少年達はこの先もずっと、悔恨を背負っていかなくちゃならないから…。 善悪も儘ならない子ども達にとっては、結果として深く傷を残こすことになってしまっただろう。 だからオレは…しばらく孤児院へは、行かない方がいいかもしれない。 「さすがにな…。あんなヘマは二度とやりたくねーし…」 今回ばかりはジーナも慎重に。真剣な面持ちで述べる。 「そだね…。ティコ達を、また巻き込んじゃうかもしれないから。」 こうも自分を中心にして、物騒な事が起こってしまうと。嫌でも神子なんだと痛感させられる。 元々自由な身でもないから… 更に制約が課せられるかと思うと、やるせない。 「平穏を取り戻すまでは、セツも辛いだろうが…その為にも私は、お前の剣となり盾となり…尽力するから。」 「ありがとう、ルーファス。でも…無茶はしないでね?」 オレが落ち込んでるのが解るからか、後ろに控えるルーが肩に手を乗せてきて。仰ぎ見れば、その心強い眼差しで励ましてくれる。 その言葉は何より励みになるけれど…。 あんな夢を見た後じゃ、ルーに何かあったらって不安も否めないから…ちょっと複雑だ。 ほんのちょっとずつだけど、神子としての力もついてきて。自分が神子だって…一応は名乗れるようになってきたんだ。 焦ってるわけではないけれど。 早くみんなの役に立てるように、もっともっと頑張らなくちゃ…。 「報告は以上ですので。」 解散を言い渡し、ヴィンは早々と席を立つ。 「ヴィン、また出かけんのか?」 そのまま、出かけるような素振りを見せたので声を掛けたら。ヴィンは眼鏡を直しながら答える。 「ええ。改めて神子について調べておこうかと思いまして。大神殿の書庫に行こうかと。」 なんでも、神子に関する文献が揃っているんだとか。 「それって、オレ以外の神子の事とかも分かったりすんの?」 「古い記録なので、曖昧な物もありますが…それなりに情報は得られるかと。」 なら、今までの神子がどうやって覚醒したのかとか…知れるかもだよね? そうなれば色々と、参考になるかもしれないから。 「じゃあさ、オレも連れて行ってよ。」 「ふむ…そうですね…せっかくですし、一緒に参りましょうか。」 珍しく前向きだからか、ヴィンもふたつ返事で承諾してくれて。お約束にも、ルーを確認するよう見やると。 「セツが勉学に励むならば、私も鍛練に努めたいところだが…」 オレから離れたくないのか、ルーは口元に手を当て思案する。 ヴィンだって元は特級騎士だし、ルーに引けを取らない実力者だ。加えて大神殿は比較的安全で、宮殿よりも近場だから。 特に、問題はないと思うんだけれど…。 「…やはり、私も一緒に行こう。」 「ルー…」 ヴィンを信用していないワケじゃないだろうけど。 どうしても心配だから、と付け加えるルー。 本当は自分も鍛練したいだろうに…なんだか、申し訳なく思っていると。

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