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④
「…なら、しばらくは外出も無理そうだね…」
ロロが寂しそうに呟き。
頭を過るのは、孤児院でのこと。
目覚めてすぐ、気になって確認してもらったけど…。
少年達を追っていたグリモアの手下は、途中で遭遇したジーナが倒したらしくて、みんな無事だったそう。
因みに、小屋の見張りをしていた残りの手下は皆、ムーバに殺されていたらしい。
「ティコも心配してたし…あの少年達も傷付けちゃったからね…」
どんな形であれ…神子を騙し、グリモアの口車に乗ってしまった事実は覆らないし。
その罪を許したとしても。少年達はこの先もずっと、悔恨を背負っていかなくちゃならないから…。
善悪も儘ならない子ども達にとっては、結果として深く傷を残こすことになってしまっただろう。
だからオレは…しばらく孤児院へは、行かない方がいいかもしれない。
「さすがにな…。あんなヘマは二度とやりたくねーし…」
今回ばかりはジーナも慎重に。真剣な面持ちで述べる。
「そだね…。ティコ達を、また巻き込んじゃうかもしれないから。」
こうも自分を中心にして、物騒な事が起こってしまうと。嫌でも神子なんだと痛感させられる。
元々自由な身でもないから…
更に制約が課せられるかと思うと、やるせない。
「平穏を取り戻すまでは、セツも辛いだろうが…その為にも私は、お前の剣となり盾となり…尽力するから。」
「ありがとう、ルーファス。でも…無茶はしないでね?」
オレが落ち込んでるのが解るからか、後ろに控えるルーが肩に手を乗せてきて。仰ぎ見れば、その心強い眼差しで励ましてくれる。
その言葉は何より励みになるけれど…。
あんな夢を見た後じゃ、ルーに何かあったらって不安も否めないから…ちょっと複雑だ。
ほんのちょっとずつだけど、神子としての力もついてきて。自分が神子だって…一応は名乗れるようになってきたんだ。
焦ってるわけではないけれど。
早くみんなの役に立てるように、もっともっと頑張らなくちゃ…。
「報告は以上ですので。」
解散を言い渡し、ヴィンは早々と席を立つ。
「ヴィン、また出かけんのか?」
そのまま、出かけるような素振りを見せたので声を掛けたら。ヴィンは眼鏡を直しながら答える。
「ええ。改めて神子について調べておこうかと思いまして。大神殿の書庫に行こうかと。」
なんでも、神子に関する文献が揃っているんだとか。
「それって、オレ以外の神子の事とかも分かったりすんの?」
「古い記録なので、曖昧な物もありますが…それなりに情報は得られるかと。」
なら、今までの神子がどうやって覚醒したのかとか…知れるかもだよね?
そうなれば色々と、参考になるかもしれないから。
「じゃあさ、オレも連れて行ってよ。」
「ふむ…そうですね…せっかくですし、一緒に参りましょうか。」
珍しく前向きだからか、ヴィンもふたつ返事で承諾してくれて。お約束にも、ルーを確認するよう見やると。
「セツが勉学に励むならば、私も鍛練に努めたいところだが…」
オレから離れたくないのか、ルーは口元に手を当て思案する。
ヴィンだって元は特級騎士だし、ルーに引けを取らない実力者だ。加えて大神殿は比較的安全で、宮殿よりも近場だから。
特に、問題はないと思うんだけれど…。
「…やはり、私も一緒に行こう。」
「ルー…」
ヴィンを信用していないワケじゃないだろうけど。
どうしても心配だから、と付け加えるルー。
本当は自分も鍛練したいだろうに…なんだか、申し訳なく思っていると。
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