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⑦
「セツ殿、よくぞ参られました。」
「トリント様、こんにちは~。」
大司教様に軽く挨拶してから、今日の目的を伝えると。神子に関する文献は一般への閲覧許可はされておらず、禁書庫に保管してあるのだとの説明を受ける。
まあそこは神子の特権もあるし、トリント様のフランクさも相成って。あっさりと許可は降りたのだけど。
んでもって早速、オレ達は神殿の奥にあるという禁書庫へと向かった。
「わああ~…如何にもって感じだなぁ…」
窓もない、真っ暗な室内に魔法石の灯りを灯すと。古めかしい本が敷き詰められた棚が、ずらりと視覚いっぱいに広がり…。
なんとも分厚く難しそうな雰囲気のそれに、オレは少しばかり尻込みしてしまう。
だって量はハンパないし…。
見た目からして、絶対ワケ解んない内容の本にしか見えないからさ。
この中から、有用な情報をピンポイントで探そうってなると。かなり重労働なのは、間違いなさそうだ。
「年代及び種類別に、棚ごとに分類しておりますので。」
大まかな説明は、管理をしている神官さんが教えてくれて。ちらりと見れば、確かに棚端に目印となる札が貼られてたけど。
字は読める…が、年代となると話は別。
この世界の歴史なんて、ざっくりとしか学んでないからさ。相当苦戦しそうだぞ、こりゃ…。
「セツが知りたい内容は、大体この辺りの棚にあるかと思われますから。」
「えっ、ちょ───」
自分はすぐ隣の書庫に行くからと。
相変わらずの放任主義で以て、さっさと出て行ってしまったヴィン。
いやいやいや…
オレメチャクチャお前を宛にしてたんですけど?こっちの知識幼児以下なオレが、どうやって調べ物なんてすんだよ~!
ヴィンにあっさりと見捨てられたオレは、本棚を前にオロオロとして右往左往。
どうしようかと、困り果てていると…
「セツ殿、私で宜しければお手伝い致しますので。」
「えっ…オリバーさんが?……あ、ありがとう!」
見かねたオリバーさんが、そう声を掛けてくれて。
途端にオレは目を爛々と輝かせる。
なんて良い人なんだろう!
嬉しさのあまり彼の手を握り、感謝の気持ちを伝えると。ちょっと驚いた顔をされちゃったけれど…
次には照れたよう、笑顔で返してくれた。
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