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「そろそろ参りましょうか、このままだと日が暮れてしまいそうですし…」 「あっ、はい!」 いつもはルーがいる隣に、今はオリバーさんと並んで帰り道を歩く。 やっぱり彼も目立つから、道すがら騎士や文官達にたくさん声を掛けられて… 改めて凄い人なんだなぁと、実感する。 そうして他愛のない話をしながら。オレはオリバーさんの護衛のもと、ようやく屋敷の前まで辿り着き。 なんだか長いようで、あっという間だったけど。 いつもと違い、充実した1日になったなぁと…しみじみ思い返した。 「忙しいのに、こんな長く付き合わせてしまって…ごめんなさい。」 さっきの騎士さん達は、大丈夫って言ってたけど。 実は神子のオレに遠慮してただけで、本当は何か用事があったのかもだし…。騎士団の隊長さんを、オレの都合で長々と独占しちゃったのは不味かったかなぁと、反省する。 オリバーさんが親切で、すっごく優しくしてくれるから。ついつい甘えちゃったよね~…。 「こうしてセツ殿と、ゆっくりお話する機会もありませんでしたから…。その、私としてはとても有意義な時間を過ごせて…光栄でしたよ。」 オレが深々頭を下げると、オリバーさんははにかんで答える。 はあ~…やっぱこういう粋なとこが、素敵だよね。 嫌味も無くスマートで、ホント爽やかだし。 「オレもすっごく楽しかったです。オリバーさんとだったら、勉強も全然苦にならないし…」 「それは良かった…ではまた機会があれば、ご教授致しましょう。」 「ホントですか~、是非お願いしますね!」 約束ですよ?って、嬉しくてつい無意識にも彼の手を取り歓喜すれば…オリバーさんは、大きな体躯をビクリと揺らし。またまた頬を赤く染めちゃって。 「せ、セツ殿っ…いきなり触れられては、」 困ります、だなんて。 いつぞやのルーみたいな反応を見せるオリバーさん。 やっぱりフェレスティナでは、男同士でも無闇に触っちゃダメなのかな?…でも、ルーやアシュ、ロロなんかは普通に触ってくるし…。 ヴィンは元からじゃれ合うタイプじゃないし。ジーナは意外と硬派で照れ屋さんだからね。 となると、個人の問題なのかもしれないな~。 「あっ…だめ、ですか…?」 オリバーさんと仲良くなれた気がしたから、緩んでたのもあったけど。ちょっと調子に乗ってしまったかなと、手を引っ込めようとしたら… 逆に強く握り返されてしまい…オレはきょとんとしながら、彼を見上げた。 すると… 「いや…駄目とかではなくっ…唐突だったので、心の準備が、その…」 じっと見つめると、何故かあたふたするオリバーさんは。それはもう茹でダコみたく真っ赤っかになっちゃってて。 そういえばさっきの騎士さん達が、団長は硬派だ~とか言ってたし…男同士であっても、こういうスキンシップには慣れてないのかもなぁ。

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